紅い糸で






























気づいたのはいつだっただろうか
小指に絡まる血の色

それが君につながっていると
気づいたのはいつだっただろうか

こんな糸じゃ、
すぐに切れてしまうから、

こんな糸じゃ、
きっと君は、引きちぎってしまうから、

ほんの少しの力で、君は見失ってしまうから

だから、いつだって
君を追っているようで
君の指に絡まる
糸を追っていた

君が暴れる度
切れてしまわないように、
傷つかないように、
糸を守った


そんな、いつもの日だった、
それは、
簡単に切れてしまった
切ったのは俺だった

切ったのは、俺のナイフだった
あまりの驚きに
コエもヒョウジョウも見失って
もう、どうしたらいいのだろうかと
ナミダも出る始末

千切れた糸だか、腕だかを引かれ
呆然とした俺に重ねて届いたのは、
鳩尾に激しい痛み、
そして、意識すらも失った











目が覚めたら
君はいなかった

体を起こしたら
空は沈んでいた

千切れた糸は、
指にすら絡まっていなかった

涙を拭ったら、
のどが痛くなった

声が出なくなった

息を止めたくなって

首に手を伸ばしてみた

そこに、絡まっていた
その糸を手繰り追った
真っ赤な真っ赤な血の色
ふらふらで崩れそうな視界

その先は、君の手首に

全くどうしたものかと
少しきつめの糸は、
首輪のようで
君の声で、その糸に引かれて
俺の意思に反して
身も惹かれる

どうしたものかと
紅い糸は随分短くなって
乱暴に絡み付いている

「臨也」

名前を呼ばれたら、
頬を撫でられたら、
もう、息が出来なくなるよ

いつも通りの罵声も、
優しい声音と瞳だから、
大人しく抱き潰されるしかなった
どこもかしこも痛いのに もう、君の唇の感触を待って
視界が塞がってく
落ちていく