報われない両思い
夜中のもう何時かわからない暗さ
湿っぽい、温い風が入ってくる
それだけで十分うぜえのに
「不思議だ」
「何が」
「シズちゃんが」
「何だよ」
「何で隣にいるのかな」
「喧嘩売ってんなら」
「やだやだ、大人しく寝ようよ」
言葉は途中で遮られた
臨也の手がポンポンと頭に触れる
「何だよ」
「俺だよ」
「あ゛?」
「折原臨也が隣で寝てるんだよ」
「・・・・」
「心の底から死んで欲しいと思ってる俺が」
また始まった。
無駄に指どおりのいい髪に触れる
「何してるの?」
「髪、撫でてる」
「予想外の返事だ」
「何て言えばいいんだよ」
「・・何で俺を選んだの?」
これで何度目だろう
学生の頃から何度も、何度も
何度説明してもまた、こうやってふりだしに戻る
「だから、何て言って欲しいんだよ」
「考えてよ、それともシズちゃんの頭じゃ」
「あー、うるせえ、黙れ」
今度は俺が遮った
「わかるだろ」
「わからないよ」
「わかれよ」
「また、無茶言う」
「てめえしか居なかったんだよ」
「世界に?それは凄いね、他の人間は」
「だから、黙ってろ」
俺の力を見て、知ってそれでも俺に近づいてくる奴なんて居なかった
「俺を知ろうとする奴なんて居なかった」
「けど、それは高校の時だろ。
今君の周りには、俺や新羅以外にもいるじゃないか、
化け物じみた力を知っても尚、君といてくれる人達が。
それに、今は女の子だっているじゃない」
「俺じゃ不満かよ」
「俺はそんなこと言ってないけど?」
「だったら」
「それとも、シズちゃんはそう思ってるのかな?」
多分、思っては、いる
取りあえず、キスしてみた
「行動に予測がつかない」
「嫌なら突き放すもんだろ」
「どうかな、突き放さない人も居るかもしれないよ?」
臨也は楽しそうに笑いながら言った
「俺でいいの?」
「だから、そう言ってんだろ」
「全くもって、理解できないな」
「だから、巻き込むのか」
色んな人間に引き合わせて
「半分ずつかな、興味があるんだよね。どんな反応するのか」
「大体、てめえの誕生日にすることかよ」
「態々来てくれたんだって?」
「お陰で、殺人犯扱いされた」
「いいじゃない、すぐばれたでしょ?
それに、一日中俺のこと考えてたんだから幸せじゃない」
「てめえ、いつになったら気が済むんだよ」
「ムリだよ、趣味だから」
頬をつねる
「痛い、シズちゃん加減してよ、千切れる」
「あ?してんだろうが」
「いや、全然出来てないよ」
「うるせえな」
手を離してやった
「でも、ま、なんで俺なのかなって」
「何て言えば、納得するんだ」
「俺も、それが知りたくて聞いてるんだけどね」
「これじゃダメなのか?」
「ん?」
手を伸ばして、臨也を抱きしめる
「こうやって、触れたいとか」
「うん」
「それだけじゃ理由にならないのか?」
「シズちゃんがそう思うなら、いいんじゃない?」
「お前、ほんと性格悪いな」
「だから言ってるのに、
君は、俺がこんなだって、知ってて触れたいと思うんだろ?」
「ああ」
「あのね、シズちゃん、俺は自身がないんだよ。
誰か一人を愛して、信じ続けるのが辛い。
愛されていると自覚するのが怖い。
ほんの一瞬でも、相手を疑うのが寂しい。
だって、絶対なんて有り得ないだろ?
俺は、愚かで、卑怯だから」
「もういいだろ」
「何、疲れた?」
「めんどくせーんだよ」
「恋人の価値観を知るのは大事なことだよ」
「恋人かよ」
「違うの?俺はそう思ってたけど」
「・・・違わない」
細い首をつかむ
「首輪でもつけとくか」
「シズちゃんにしては、賢いね。
でも、シズちゃんは優しいから、俺の趣味を奪わないだろ」
「そうだな」
結局どうしたいんだ
俺も、お前も、
もう何年もこんなことを繰り返して
「絶対ってのは、最後までこうしていれば、信用できるのか?」
「そうだね、死ぬ寸前まで、こうしていられたら」
「寸前って、じゃあ、死ぬまでこうなのか」
「多分、俺はこうだろうね。
もしかしたら、シズちゃんは俺に嫌気がさしてるかもね、
明日、目が覚めたら、ここにいないかも・・・」
声音が段々小さくなって、寂しそうにしがみ付く
「俺、結構シズちゃんのこと好きなんだけどな」
「何勝手に別れさせてんだよ」
「どうしたら伝わるのかな」
「俺が知りたい」
「そっか」
臨也は苦笑する
抱きしめた腕や、触れているところから、
全部流れていけばいいのに
こんなに好きで仕方が無いんだと
「報われないよね」
「ああ、もう寝るぞ」
「うん、おやすみ」
本当に、報われない