極まりない





























「ふー」
煙草の煙がゆるゆると舞う
日は落ちかけて、
橙の夕日から隠れたビルの間
薄温い風も、煙草の副流煙も
いやに静かなこの場所も


「なあ、」
「・・・」
その声音も

「おい」
「・・・」
視線も

「何泣いてんだよ」
「・・何?誰が泣いてるの、俺?」
その鋭さも

「泣いてんだろうが」
「あのさシズちゃん、目見えてるかな・・?」
君を取り巻く全てが

「・・・」
「誰が君の前で泣くのさ」
不快

「・・だから、てめえだろ」
「困ったな、シズちゃんとうとう言葉も通じなくなったのかな」
「・・・」
「どうしたのかな、なんで殴らないの?」
「殴られたいのかよ」
「そんな筈ないだろ、というか俺にそんな趣味は無いよ」
「そうかよ」
「・・・」


「ふー」
煙が舞う
その視線

「気持ち悪いんだけど」
「めんどくせーな」
その行動も
どこまでいっても、それは
とても不快
頭上を掠める煙と呼吸音
俺より高い体温
加減が足りない腕
決して頬は濡れていないのに

「やっぱ、泣いてんじゃねえか」
「泣いてない」
「あー、わかったから、黙ってろ」
くしゃっと、髪を掴まれる
ほら、今やっと頬を伝いだしたのに

「シズちゃん」
「んだよ」
思い通りにならない駒なんて

「嫌いだよ」
「ふー」
また、舞う


「俺は・・・好きだけどな」
「・・・・」



やっぱり不快