あれも、それも、多分これも






















勿論、始まりは突然

「まーた池袋来てたんだなぁ、臨也君よぉ」
「まーた見つけちゃったんだぁ、シズちゃん」

はあ、折角人間観察してたのに

「何逃げてんだよ、こらっ」
「シズちゃんこそ何で追いかけて来るのかなー」

歩くスピードを上げながら、
飛んでくる障害物を避ける

「てめえが逃げてんだろうがっ」
「っ・・・そのうち道路剥がして投げてきそうだよね」
「うぜえんだよ、死ね」
「あのさーシズちゃん、穏便って言葉知ってる?」
「知るかっ」

逃げ道を確保

「そうだよね、けどまっ、俺も捕まる気無いからさ」
「ちっ、くそがっ」
「何で一々追いかけてくるかな、と」
「だから、てめえが逃げなきゃ済む話だろうが」
「逃げなくたって追いかけてくるくせに」

出来るだけ相手の邪魔になる道を探る

「息の根が止まれば、追わねぇよ」
「ほらね、これだからシズちゃんは」
「うるせえな、ちょっと黙ってろ」
「もういい歳なんだからさ、人に迷惑かけちゃだめだよ」
「どの口が言ってんだ、死ね」

大通りを渡りきって、振り返る

「よっと、まあ、取りあえずさ」
「ああ?」
「死んでよシズちゃん」

真横からトラックが突っ込む




「ってーな、くそが、骨折れたらどうすんだよ」
「・・マジかよ」

トラックを人間が止めるなんて、シュールな画
化け物の神経は俺から運転手へ移る

「つーか何してんだてめえ、人轢いといて詫びもなしかぁ?」
「トラック止める奴は人じゃないよ・・」
「うらあああぁああぁ」
「昔は跳ねられてたのに、、、」



トラックを半壊
運転手は奇跡の生還


アクション映画じゃないんだからさ。






「あー、くっそ、超いてー」
「シズちゃんそれ折れてるから」
「んだよ、畜生」

とんでもない化け物だな

「今日はこれで終わりにしようよ」
「おい、逃げてんじゃねえ」
「あのさ、俺一応心配してんだよ?」
「んで、今度は何がとんで来るんだよ」
「・・・へー」

流石、シズちゃん。
俺がどういう人間かよくわかってるよね
けど、今日はこれ以上やる気ないなぁ

「ったくよ、てめえは池袋くんなって言ってんだろうが」
「だからって一々・・・」

そこで言葉を切った
そろそろ、通報なり、なんなりされているだろうし。
場所を変えよう

「ああ?」
「シズちゃんが追いかけなきゃいいのにね」
「てめえが来なけりゃいいんだよ」
「とか言って、結局新宿まで来るくせに」
「てめえも一々目立つ格好してんなよ」

ふらつきながらも、まだ俺を追ってくる
口だけの喧嘩を続けながら、
都会ならどこにでもある寂れたビルの間

「あ、何か腫れきたぞ」
「固定しろよ」
「シップがいるな」

座り込んで、折れた腕を見ながら何か呟いている

「シズちゃんて馬鹿だよね」
「っ、てめぇ、何してんだこら」
「片腕になったら静かになるかなー、なんて」
「殺す」
折れた腕に向けてナイフを突き刺したが、
やっぱ、刺さらないな。
このまま体重を掛けてようとして、
さっさとナイフを手放した

「落ちたぞ」
「んー?」
腕を伸ばして、唇を近づける
言葉を吐いたままの開いた口へ
すぐに、舌の温度が混じっていく


「シズちゃんさ、煙草止めようよ」
「なんで」
交じり合った液体を飲み込む度に
「苦いんだよ」
「慣れろよ」
片腕が後ろにまわされる
キスすると
また、煙草の苦い味がする
味だけなら、
まあ、慣れてもいいけど
離れたあとに残る、
自分とは違う匂いが
「やーだ」

息の止め合いは続く




殴るのも
指が絡まるのも
罵声も
君と混ざる行為は全て

喧嘩にしておこう

「何笑ってんだよ」
「ん、楽しいだろ?」

君も、君に映る俺も、随分悪い顔をしている

これも喧嘩でいいだろ?

「ああ」

だって、他に言葉が見つからない