愛ノ験に























何をどうしたのか
深くは無いけど
「いてて」
足首から地面へと零れる血
「あーあ」







「ねえシズちゃん、
紅い糸って足首に巻かれてるらしいよ」
「紅い糸?」

誰が指に絡めたのか

「運命の相手に繋がってるっていう」
「足じゃ気づかねえだろ」

「まあね」

そう、きっと君は見落とす

時間の計算も、記憶の整理も、
俺は得意だけど
君は下手だから
簡単に
今もすら
忘れる
かな





「俺に繋がる」
「は?」
「それ」
足首から流れる紅に手を伸ばす
シズちゃんの腕から流れる紅が混ざる


君の言葉はいつも勝手で、
予想もしないところから飛んできて
暴力のように俺の理屈を吹き飛ばす

「シズちゃん話聞いてた?足首だよ」
「だー、うるせえな」
それに負けないように
俺は俺の理屈を必死に投げる

そのまま手を自分の頬に血をあてる
「おら、これで見えるだろうが」
「・・何それ、あいかわらず不可解だね。
それに、拭けばとれるよ」
「じゃあ、喧嘩する度にしてやるよ」
「やだよ、気持ち悪い」
「てめえ」
「毎回血流すの?俺は御免だよ。
それに、シズちゃんバカだからすぐ忘れるよ」
「おい」
「傷だってすぐ治るし」
「ガキみたいにゴネてんじゃねえよ」
「シズちゃん、俺ら学生だよ。十分ガキだって」
「うるせえな、息すんな」
「辛辣だな」


イライラしてる君の雰囲気とか、声とかも
俺は記憶していくのに

でもやっぱり君は、簡単に俺の理屈を打ち砕く

「だったら、てめえが覚えてろよ」
「・・・他力本願?」
「あー?日本語喋れ」
「俺、本気でシズちゃんが心配になった」
あ、やば、完全に気抜いていた
拳が飛んできて、壁にぶち当たる
「へ?」
すぐにシズちゃんを見ると、顔が近づいてきて
「ちょっと・・・・、い゛って」
「・・・・・」
淡い期待もやはり、打ち砕かれ

まじまじと自分が噛んだ首を見る
「シズちゃん、頼むから死んでよ」
「この方がらしいだろ?」
喧嘩してる時には、見たことない顔で笑う
「・・・確かに」
「俺もつられた」

化け物の噛み跡なんて、
色気のかけらも無いのだから

やっぱり君には、俺の理屈は通じない



と、安心する