stagnates temperately
























「ん?」
急に右手を掴まれ
「何?」
「臨也、それ離せ」
「どうしたの」
「・・・」
コップを左手に持ちかえるとすぐに、
右手の指輪がはずされる
「ちげーよ、ここ置け」
「ん」
今度は、左手の指輪をはずされる
行動が読めないので、取りあえず
「シズちゃん、それ気に入ってるんだけど」
・・・
と、念を押すが
聞いてないようで


左手に指輪がはまる
あ、帰ってきた?
けど、これは

そして、シズちゃんは、右手の指輪を自分の指に
「シズちゃん?ってかサイズが」
「・・し」
どうやら指に納まったらしく、
それを満足気に見つめている
何やってんだか
「よく入ったよね」
「ああ」
「指サイズあんまり変わらないのかな」
まあ、細身だしね

「ああ、・・あ゛?」
「ん?」
まさか
「とれねえ」
「ちょっ、バカ」
「いや、マジで」
「無理やり止めろって、割れるからっ」
「うるせえな、抜けねんだよ」
「それ、気に入ってるんだって」
「知るか、俺今から仕事だぞ」
「ほんとバカっ」
「入ったのに、何で取れねんだよ」
「知らないよ、もう」
「おい、洗剤よこせ」
「止めろよ、俺の指輪に洗剤とか」
「仕方ねえだろ」
「勘弁しろよ」



「いざや君どうしたのー」
「大きい声」
隣の部屋にいた二人が顔を出す
「サイケ、津軽、見てよこのバカ」
「バカバカうるせえな、マジで割るぞ」
「しずちゃんどうしたのー」
「指輪?」
ぽてぽてと二人が近づく

「おい蚤虫、指が腫れてきた」
「あ、ほんとだ血が止まってるんだよ」
そう言うと、シズちゃんの顔から一気に血の気が引く
「・・・割る」
「ばか、待てよ」
慌ててシズちゃんの腕を掴むと、
サイケが俺の服を引く
「いざやくん」
「ん?」
「俺出来るよ?ね、つがる」
「ん」
「ほんと?洗剤はだめだよ?」
「うん、できるっ」
「しずお、指、貸して」
「おお」
津軽がシズちゃんの手を掴み、肩位に上げ、
薬指をぎゅーっと握る
「しずちゃん大きく息吸ってー」
「ん」
「はいてー」
「ふー」
「つがる?」
「ん、まだ」
「もー、しずお力抜いて」
「おお」
なんだか良くわからないけど、
二人の言う通りにするシズちゃんがおもしろい
「つがるー」
「んー」
「シズちゃん」
「ん?」
要はリラックスさせればいいのだろう
くしゃくしゃと頭を撫でる
「なんだ?」
「まあまあ」
「・・・」
不満そうな顔をしながら、深呼吸を繰り返す


何度かそれを繰り返しているうち
「あ、はずれた」
「やったー」
「おお」
「へー」


「ねー、できたでしょ?」
「凄いね、サイケ」
すぐにサイケがしがみ付いてくる
「いざや君、俺もいいこして」
「サイケはえらいね」
よく出来ましたと、頭を撫でる
「きゃー」
「いざや、見て、俺も」
津軽が抜けた指輪を俺に差し出す
「ありがと、二人とも良い子だね」
「なんか、母親みたいだな」
「うるさいよ。ほら、シズちゃんがプリン買ってくれるって」
「ほんとー?」
「嬉しい」
「・・わかったよ、ありがとな」
シズちゃんも津軽とサイケの頭を撫でてあげる
「うん」
「ん」



「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃーい」
「気をつけて」
「あ、シズちゃんケーキもねー」

見えるように、左手を振ると、
少し照れて
「わかったって、じゃあな」
自分ではめたくせに



「サイケ」
「なーに?つがる」
「あれ、違う」
「ん?・・ほんとだ」
「内緒」
「ん」



津軽に受け取った指輪を右手の人差し指にはめる
そして、左手の薬指にはまった指輪をながめる
違和感にすら呆れて、
ほんと、何やってんだか