far and near






























「て、めぇっ」

本当はこんな馬鹿力

「ね、シズちゃん」
「ああ゛?」

くそ

「俺だったら、死なないじゃない?」

わかってる
力任せに、リミッターもはずして、
本気でやりあえる

そもそも、セーブできないことを知っている
それを臨也は理解している

それでも、

本当は、傷つけたくないのに
好いた相手なら
尚更

愛情表現が暴力なんて


「可哀想に」

だから、

「シズちゃん」

本当は

「ずっと俺を好きでいればいい」

殴りたくなんて

「そうすれば、許せるんじゃない?」

わかっているから、
だから、尚更
尚更好きなれない
こんなのはおかしい

「いっだ、、」

倒れこむ臨也に覆いかぶさる

「ぅ、わ」

こうやって、お前を選ぶのは

「あー、よしよし」
「・・・うぜぇ」

両腕が俺を掴む
情けない
散々傷だらけにした挙句
この様

「シズちゃんの暴力って嫌いだなー」
「・・・」
「そのせいでシズちゃん泣いちゃうんだもん」
「泣いてねえ」
「あはは」

黙って、頬を舐める
「いつものことだし」
擦れて、血が滲んでいる
「ってか、舐めても治らないって」
そんなことわかっている
背を優しく撫でられて
つい力がはいる
「うっ、痛、ちょっとシズちゃん」
「あ、わり」
「そうそう、力みすぎ・・あーそれ位ね。」

力を出したあとは、
加減が、うまくできない
「・・臨也」
「大丈夫だよ、何回喧嘩してると思ってんの」
「はは、」
掠れて、乾いた笑いしか出てこない



「なんていうか、俺も大概最強なんじゃないかな」
「・・・ああ」
そうあってほしい
こんな面倒な力は、受け止めてくれなくていい
「シズちゃん?」
血の滲んだ唇も舐めて


逃げられないように、
離れていかないように、

ほんの少し体重をかける

そうすれば、
背に回された手が強まるから、

唇を離して、

でも触れるぎりぎりの距離で、

「好きだ」

言葉が唇を掠ると恋しくなって、

返事はいらないから

またキスをする