サンタクロースの謀



































目が覚めて
妙に片付いた部屋があって
で、
やっぱりあいつは
「帰りやがった」
なんとなく、そんな気はしていた
洗面台に向かって
鏡にメモが張り付いていた
『タバコを買いにコンビニへ向かう。』
「なんだぁ?」
タバコなら、と、
いつもの場所を見る
ない
バーテン服のポケット
ない
カートン買いしておいた紙袋の中
・・・ない
「くっそ、ノミ虫野郎・・」















と、まあ、
きっと、イライラしながら、シズちゃんはコンビニへ向かう。
そこで、休憩中の上司、部下に出会う。
軽く祝ってもらい。
次の目的地へ誘導される。

次、ワゴン組のお出迎え
一頻り語らったあと、次の目的地へ

途中来良の子達に出会い、
抱えたプレゼントを指摘され、また、軽く祝ってもらう。

新羅宅にて遅い昼食。
運び屋と談笑。
日が暮れる頃家路に

途中の公園で、クルリとマイルに会う。
俺の話題を出て若干機嫌を損ねるが、
プレゼントを受け取り、自宅へ

最後。弟の幽君とルリちゃんがお出迎え、
部屋には豪華な食事とケーキとプリンとプレゼントと






まあ、今まさに食事中ってとこかな。
うん、いいシナリオだ
今日はきっと一度もキレずに済んだはず。


良かったね、シズちゃん


「おめでとう」
「・・・言うなら面と向かって言えよ」
「・・・・・・おかしいな、シナリオに俺は組み込まれてないんだけど」
「知るかよ」
「・・・プレゼント持って無いっていことは、一旦家に帰ったんだよね?」
「ああ」
「ここ、新宿だよ」
「ああ」
「今日は俺池袋に行ってないんだけど」
「うるせえな・・・」
「幽君達との食事は?」
「・・・幽に、仕事が入った」
「嘘でしょ」


「・・・何がしたいんだよ」
「折角のプレゼントなんだから、全部受け取りなよ」
「てめえは」
「ん?」
「何かねえのかよ」
「平和な今日一日が俺のプレゼントだったんだけどね」
「・・・」
「折角化け物のシズちゃんに平凡な一日を上げたのに。俺がいない、キレない一日をさ」
「プレゼントってのは、相手喜ばせるためにあんだろが」
「まあね、でも、上げるほうの自己満足かもよ」
「俺が一番喜ぶもんをよこせよ」
「・・・プリン?」
「あ?馬鹿にしてんのか?」
「じゃあ、平凡で人間的な一日」
「一番じゃねえよ」
「幽君からの・・」
「あー、もう、うぜえ殺すっ」
「何だ、いつもの喧嘩がお望みだったの?」
ナイフを向ける

そして、
「てめぇは・・」
「違うよね?」
言葉を遮って、手を離す
勿論ナイフが地面に落ちて俺の手が空く

「・・・」
「はい、どうぞ」
「っ・・」
その手をシズちゃんに伸ばせば
引かれて、懐に
今なら傷一つくらい付けられるかもしれないけど
生憎ナイフは地面の上



「で、幽君はどうしたの?」
「彼女と飯食ってんじゃねえか?」
「折角用意してくれたのに?」
「・・・」
「何?」
「なんつーか、」
「何だよ」
「こうなると思ってたって」
「・・・」
「飯は別の日になった」
成程
幽君の方が上手だったか
「抜かったなぁ」
急に面倒になって、シズちゃんに体重をかける
「お前のシナリオ通り行ったことなんか無いだろ」
「主に君の所為でね」
「噛んでもいいか」
「何でだよ、ダメに決まってんだろ」
「なあ」
「ん?」
「ありがとな」
「どーいたしまして、楽しかった?」
「まあ」
「俺と喧嘩すんのやんなった?」
「・・・余計イライラした」
「それは予想外だったな」

「この後の予定は」
「何だよ」
「何だと思う?」
シズちゃんは少し考えて、口を開いた瞬間キスをした
「てめえ聞く気ないだろ」
「今日は、暇だったなー」
触れた唇を指でなぞって、
またキスをする

ねえ、折角あげるんだから、もっとがっついてよ