かくれんぼ



































月があんまり綺麗だから
仕事の帰り道
ぼんやり眺めていた

真冬の空は透き通る
いつもより高いところに空があるみたいで、
なんとなく腹ただしいけど
なんとなくキレイだと思う


こんな夜は
なんだか無性に会いたくて
会いたくて仕方がなくて
溜息ばかりが繰り返し
白を作る

こんな夜に
君がもし見つけてくれるなら
何を話そうか
何を伝えようか
何て顔をしようか

こんな夜に
君は何を思っているんだろう
何を考えているんだろう
どこで息をしているんだろう

嗚呼、会いたいな

「何回言えばわかんだよ、てめえは」
「ほんとタイミング良いよね」

ほら、期待するじゃないか
いつだって、君が見つけてくれるって
見つけられたがってるのが
ばれそうじゃないか
「何でいつも探してるの」
「別に」
歯切れの悪さ
いつもどうして見つけるのか
俺が池袋に出歩けば
必ず
君が見つけてくれるんじゃないかって
そんな期待ばかり増えるだろう
どれだけ
繰り返すんだろうか
君が俺を見つけては逃がして
ねえシズちゃん
「俺期待してるんだよ」
「してろよ」

いつになったって、
不安は消えないし
いつになったって
君は思い通りになんてならないし

いつになったって
不安は消えないし


「裏切られると辛いなぁ」
「裏切ったことねぇだろうが」
「信じられないよ」
「信じろよ」
「信用なんてすぐ、不安にかわるんだよ」
しんどいなぁ
「だったら、側に居ればいいだろ」
「できないよ」
「ああ、知ってる
だから探してんだろうがいっつも
お前不安だとか抜かすけどな
俺だって探して、探しまくって見つからなかったら不安になんだよ
てめぇだけ被害者みたい顔してんなっ
世紀の加害者がよ
いっつもつまんねぇ面しやがって
大体待ってなくて良いんだよ
勝手に見つけてやる」
珍しく矢継ぎ早に言われて
呆けてしまった

自分で思っていたよりも君が好きで
居てくれないと、落ち着かなくて
ちょっかい出すふりして、様子見して
見つけて欲しいから、わざとここに来て
だって、こんなに好きだと思わなかった
どうしたらいいのかわからなくなる
息さえ止まりそうになる

その目をじっと見つめるだけで、
吸い込まれるんじゃないかって

声も肌もどれだけ近づいても信じられないから
君が飽きないように
追いかけるのを止めてしまわないように
追う理由を必死に作る

「ねえシズちゃん」
「なんだよ」
「信じられないんだ」
自分を
「ああ」
そしてきっと、
君も同じ

抱きしめられる体温すら疑ってしまう

いつまでも、きっと同じ



きっと、明日もまた繰り返す
信用できずに不安になって
君と二人きりのかくれんぼ
逃げるのは俺で、
鬼はずっと君
見つけても
見つけられても
永遠に終わらない
かくれんぼ
永遠に
終われない
かくれんぼ