我侭な君へ



































家に帰ると鍵が開いていた
掛け忘れた記憶はない
が、くせえ
触れている部分からドアが悲鳴を上げる
「おいこら、てめえ」
「ああ、おかえり」
「ん。いや、何してんだ死ね」
「途中で雨が暴風雨になったもんだから、新宿まで帰るのだるくてさ」
「わかった、今すぐ投げ飛ばしてやる」
「・・君ホントにできそうだよね、ご飯できてるよ。お風呂も沸いてるし、先入ってくれば?」
「・・・」
「濡れたでしょ?」
「・・・入ってくる」
「いってらっしゃい」
ひらひらと手を振って見送られる


部屋が片付いてて、料理が容易されていて、風呂が沸いていて
勿論一番風呂が空いていて、
臨也がいたせり尽くせりに整えてる時
他の事に目もくれず優しくされたい時だ
何が有った?と聞いて、素直に離す奴でもない
態々聞いてやる気も無い
だから、風呂上り
とりあえず抱きしめて確かめる
「ちょっと頭濡れてる・・シズちゃん甘えたなの?」
お前が甘えたいくせに
肩口から料理を覗き込む
相変わらず、うまそうなもん作るなあ
「どうせ何か有ったんだろ」
「そう言うと、くしゃっと表情を崩す」
「なんで?」
「別に、言いたくないなら聞かねえよ」
「言いたくない」
「てめえ・・」
「ちょっと、シズちゃん痛い痛い」
腹減ってんだけどな
触れたり、抱きしめる力を強めたりして、じゃれ付く
猫をあやすみたいに
そうしたら、ゴロゴロって簡単に擦り寄ってくるから
「も、わかったって」
そう言うまで構ってやる
ここで、腹減ったとか、眠いとか言うと
機嫌悪くなるから
「ほら、ご飯食べようよ」
って言われるまで待つ
「ん〜」
肩口に擦り寄ると
絡めてる腕を解いてくるから、そうしたら離れていい
で、食い終わったら多分
テレビでもつけて食器とか片付くのを待つ
あいつが戻ってきたら、クッション代わりにまた抱きしめる
もし何か喋りだしたら、相槌は打ってやるけど
言葉は返さない
どうしても面倒なことを言い出したら、大丈夫だ、とだけ言ってやる
そうやって、今日は甘やかす
たまには、仕方ない
今日はそういう日だ
「もう、何なんだよ」
「うるせ」
そうやって、ふにゃふにゃに臨也を溶かしながら
そんなこいつに、多分俺も癒される
今日は多分そういう日