リピート


































毎度毎度何か有るとうちに来て、
2、3会話しては帰っていく
集まって飲むことも無ければ、
連絡だって年に数回ある程度
医者という立場だからではなく、
一応は、気をを使っているつもりなんだよ
これでも

「・・・はあ」
「患者に溜息吐くってどうなんだ?」
「基本的にさ、僕はセルティに関わること以外どうでもいいんだ」
「知ってるよ」
何を今更と、続ける
「だけどね、君たちが怪我をすればやっぱり、心配は・・・・・しないね、自業自得だもんね君たちの場合」
「何が言いたいんだ?」
「例えば君たちが今の医療で完治できない病にかかったり、果ては死んでしまったとしたなら、
僕は数少ない古い友人として悲しむし、もしかしたら涙するかもしれない」
「それはまた」
嬉しいとか、冗談を言うなとか、
社交辞令のようなどうとでも取れるように返す
「そしてそんな僕を見てセルティは・・」
「新羅」
「ふん、もう少し話させてくれてもいいんじゃないかい?」
「その辺りは俺に話したって無駄だろ?共感を得ないんだから」
「何言ってるのさ、共感されたら迷惑だよ。セルティのことは僕だけが理解していればいいんだから」
「ああ、そうだった、久々だったせいで言葉を間違えたよ」
「そうかい、それで最近のセルティなんだけど」
「いいから手を動かせよ」
と、動きの鈍い腕を振る

「ああ、そうだったね。骨は折れてないようだけど」
「流石にそんな怪我ばかりしてられないさ」
「ん、ちょっとずれてるかな、失礼」
「うぐっ」
「うん、よし。あとは固定しておけば、臨也なら数日で完治するんじゃない?」
「・・・化け物と一緒にするなよ」
「静雄なら翌日、いや当日に治すかな?あいつは」
「ああ、そう。忌々しい」
声音はどうでもよさそうに、表情は憎らしそうに、
でも目はやはり悪戯を考えている子供のようだ
「早く死ねばいいのに、だろ?」
「全くだよ、次はロケットランチャーでも試そうかな」
「噴進弾発射器を国内でかい?エアガンじゃなくてだよね」
「当然だろ」
「相変わらず物理的な攻撃が好きだね。派手だし、嫌いじゃないけどさ」
「仕方ないじゃないか、非科学的な生き物と一緒にするなよ」
「その代わり性質の悪い精神攻撃は得意だよね」
「・・さあね」
「っていうか、科学的な方法なら、試していないことがいくらでもあるんじゃないかい?」
「散々試したじゃないか、像すら止める麻酔も効かないんだ、あの化け物は」
散々試した、ねえ
酸をかければ静雄だっけ溶けるのに
それをしない理由を突っ込むほど、僕は野暮じゃないけど
一応は屈服させて、勝利することに意味があるんだろうね

臨也は腕を伸ばして、ある程度動きを確かめて、
いつものジャケットを羽織る
「考えるだけで吐きそうだよ」
「そんな柔くないよ、君は」
「ふん、まあいいさ」
玄関まで送っていく
ねえ、君たちはいつまでそこに居る気かな
「月がキレイだよね」
「は?」
玄関のドアを開けてすぐ
勿論本当に月が出ているかどうかなんて確認していないけど
口にして問いかけてみたい気もするけど、
意味のある返事をもらえそうに無いから、結局いつも口を紡ぐんだ
「ねえ?」
「・・・・」
そこに愛は無いのだろうか
「・・・・・」
「ああ、新羅」
臨也はあからさまに肩を落とす
「ん?」
「そういうことは首無しに言うべきだ」
「そこは抜かりないさ、というか」
「勘繰りすぎだよ」
続く言葉は何があっても遮られるのだろう
「そうかな?」
「そうさ」

長い付き合いだ
癖も、慣れも
ある程度会話の先が読めてしまうのは、良いことなのか
それとも、余計なことなのか

君たちはやれ死ねだの殺すだのを何年も続けているけど
それはもう、離れられない何かを感じているんじゃないのかな

「僕としては、早く仲直りしてほしいんだけどね」
「首無しとの平穏な生活を、だろ」
「勿論だとも、そこまでわかってるならさあ、いや、ほんと君って殴り飛ばしたくなるよ」
「怖いなあ、素人のパンチなんてどこに入るかわからないからな」
「大丈夫顔面一発さ」
「ああ、お前はそういうやつだよ」
念押しの意味を込めて、壁にもたれながら繰り返す
「ほんとにいつまで喧嘩してるつもりだい?」
「・・じゃあな」
「程々にね」
まだ、答えは出ないらしい
出す気が無いのかな

「帰ったのか?コーヒーを入れたんだが」
「セルティ、勿論どちらも僕が頂くよ」
「あいつらもこりないな」
「ほんとにね」
「仲直りの予定はあるのか?」
「どうかな、まだなんとも」
というか、そのまだを何年続ける気だろうね
どうしても苦笑してしまう
「そうか」
愛したがりと愛されたがりなんだ。上手く転ぶべきなんだけど
「一度位顔を合わせて酒でも酌み交わしてみたいけどね」
「居酒屋に3人か?似合わないな」
と肩を震わせて笑う
「うん、僕もそう思うよ」
それでもいつか終わりは来るんだ
「楽しみだな」
「そうだね」

だから、なんども繰り返す
早く仲直りしろって、ね