縺れて絡まりなお続くVer静雄






























「ただいま」
と言うのは臨也の方
黙って帰ってくるのは俺の方
一人暮らしの自分の部屋に帰って
わざわざ言う癖は無い

だから、おかえりと言う義理も無ければ
会話する理由も無い
それでも

「あ、静ちゃん、牛乳なくなった」
「おー、明日買う」
「ん」

共同生活上の会話だけ
でも
知らないうちに食器が片付いていたり
洗濯物が干されていたりするから
たまに、畳んでみたり
買う物も偶数にしてみたり
多分変わったのはその程度

何か焼けると音と食べ物の匂いと
蛇口を捻る音とかで
台所に足を運ぶことが増えた
「まだ出来ないけど」
「ん」
「・・お腹空いた?」
「ん」
「そ、じゃあ、これいいよ食べて」
「・・」
小皿に盛られた炒め物と箸
「作りすぎたから」
「・・」
顔色を伺うと、呆れたように笑われた
「いいよ」
「ん」
「おいし?」
「まあ」
「そう、も少し待っててよ」
「わかった」
「素直だ」
「腹減ってんだよ」
「そっか」

悪態をつくことも
つかれることもなく
きっと上手くやっていけてるんだろうけど
それはそれでなんだか
目のやり場と、手の置き場に困るような感覚
居心地が悪いわけではないけど
えも言えぬ背徳感のようなものがずっと
付き纏う
割と簡単に終わるんじゃないかって
それとも
「出来たよ」
「ん」
案外長く続くのだろうか
「どうぞ」
「ん」
切り出していいことなのか
それとも
「テレビつけるよ」
「ん」
触れてはいけないことなのか
「・・・・」

「お前」
「ん?」
「・・いや、いい」
「そう」
確認したい
安定を求めたい
気まぐれなら
もう
いや
「・・俺は」
「うん」
「このままでいい」
「・・・・・」
「このままがいい」
この中途半端なままで良い
それがずっと続くなら
「そう、だね」
「・・・」
「仕方ないから、善処してあげるよ」
「お前な」
「前向きに」
「・・」
「・・考えてあげるよ」
「ん」
声も雰囲気も変わらず
いつも通りに終えたことに安心する

嫌いなことに変わりは無いけど