creda























声も表情も、匂いとか雰囲気とか


全ての感覚が妙にリアルで


俺の時間が止まった気がした


何も考えられなかった


夢だったのだと認識する前に


体が勝手に動いた


すべての感覚を使って


見つけたその人の背に飛びついた




「ぅわっ、びっくりさせんなよ」
肩口に顔を埋めた
伝わってくる温もりに、少しずつ安心する
「どうしたー?苦しいんだけど」
ジャンさんは小さくため息をついて、俺の頭を撫でる
俺は反射的にその手を掴んだ
「ジュリオ?えっと」
目は開けているけど、よく視界に入らなくてわからない
何か料理していたのかもしれない
「おーい、ジュリオちゃーん?」
ジャンさんは、空いた手で何か片付けて
「ほら、こっちこい」
「・・・はい」
ほんの少しも離れたくなくて、しがみ付く俺を
ジャンさんは少し笑って、ゆっくり手を引いてくれた




「ジュリオ、こっちに座れ」
ソファに向かい合わせに座った
絡めている手もジャンさんの
伝わる温もりも、俺に向けられている視線も





「ほら、どうした?」
その声も
「・・ジャン、さん」
絡めたに少し力を入れると、もう片方の手で頬を撫でられた
「ん?」
「俺、怖い、夢、、見ました」
「うん、どんな夢だったんだ?」
「・・・」
口を開くと、言葉になる前の声だけが漏れて
代わりに出たの涙だった
少しびっくりした顔をされて、
でもすぐに優しい顔と声と腕に抱きしめられた
「よしよし」
「っジャン、さん」
ポタポタ落ちる涙が、ジャンさんの服を汚す
「ジュリオ、ほら、泣くなって」
「・・ジャン、さんが、、」
「ん?俺が死ぬ夢でも見た?」
声が追いつかなくて、首を振った
「ジャンさんが、殺して、くれって、、俺に」
勢いを増して涙が出て、血の温度が高くなって
息がうまく出来なくなっていく
「あー、なるほど。すっげー夢だなぁ」
「すみ、ません」
「謝ることないだろ」
「でも、俺」
「酷い夢だな、ジュリオは俺のこと守りたいのに、
俺はお前に殺してって?最悪じゃん俺」
「っ違います、俺が、」
勝手に見た夢
「お前の夢の中俺って最悪」
「ジャンさん?」
抱きしめていた腕を緩めて
俺の頬を両手で挟む
「こうやって手も声も体温とかもさ、夢だと残んないくせに
やたらリアルな時あるよな」
ゆっくり顔をのぞかれる
キラキラしたジャンさんの目が見えて
「けど、どうせならお前の夢の中でも、こうやっていたいよな」
嬉しくて、熱い血が頬にだけ集まったみたいな感覚がして
「はい、俺も、同じです。嬉しい、です」
ジャンさんが笑うと光が増して、眩しくなる
「俺さ、お前の笑う顔好き、綺麗でさ」
「俺なんかより、ジャンさんの方がキレイです」
「ったく、いつまで'さん'付けてんだよ」
「あっ、すみ、ません」
「それと」
「・・'俺なんか'も、ですよね」
「そ」
「ジャン」
「ん?」
「好き、です、声も、手、も、瞳も、全部」
「んっ、、はぁ、」
キスの間、目をつむってしまうのが勿体ない気がして、
ぼんやりする意識の中、潤んでいくジャンさんの瞳を見つめた
絡まる舌の温度が混ざっていく気がする
「ん、さっきの続き、する?」
「続き、も、あったんですか?」
あきれた様な照れた様な不思議な顔をされた
「真面目に聞くんだもんなー」
「ジャンさん?・・・・好き、です」
「ん」