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「ジャン、さん」
「んー?」
食器を洗っていると覗き込むように声をかけられた
いや、ほんとにキレイなお顔ですよ
「ビスケット、1つ、余りました」
「おお、いいよ食べて」
「いえ、ジャン、どうぞ」
1枚差し出す
餌付けされるみたいにそのまま食べても良かったんだけど
「ジャンさんは良いことを思いついちゃったよ」
「はい?」
濡れている手を拭き、ジュリオからビスケットをもらう
「ジュリオ」
「はい」
「あーんしてみ?」
「・・あ、えと、はい」
ビスケットをジュリオの口までもっていく
少し照れて、キレイに口をあける
「じっとしてろよ」
「ん」
近づくと少し身じろぎするから、腕を軽く掴み
ジュリオが咥えているビスケットにかぶりつく
唇は触れないように
パキッっとビスケットを割る
「なんつってね」
「・・・・・」

また残りの食器を洗いだすと
ジュリオは目をパチクリさせて、
あんまり惚けてるもんだから、名前を呼んでみると
落としそうになったのか、慌てて口元をおさえる
「食わねーの?」
小さく首を振って、小動物みたいにもそもそと食べる
頬が少し染まって、もじもじするのがおかしくて
「ははっ、どした?」
「あ、あの、キス、したくなりました」
「んふふ」
「おれ変、ですか?」
「なんでよ、どうぞ」
手を止めてそちらを向く
「あ、あの、」
「・・・しない?」
「します」
「照れるとこじゃねえよ」
「すみ、ません、何か恥ずかしくて」
「そんなんじゃポッキーゲームは遠いな」
「なん、ですか?」
「はじとはじを加えて折った方の負け」
泡のついた両手を狐にして、パクパク食べて進んでいく
「え、ゴールは」
「まんなか?」
「でも、そうすると、唇が」
「ひっつくのよ」
「はず、かしい、です」
「ん、はは」
ジュリオの手に指を絡める
「あ、えと」
「んー?」
「どうしたんですか?」
手のひらをなぜたり
泡が落ちたり
ぎゅっと絡めてみたり
「なんででしょう?」
「あ、あの、ジャン」
目が合うとまた処女みたいな顔するし
「たべちゃうぞー」
「ふふ、美味しく、ない、ですよ」
「ほんとか?」
「ホントです。」
「ジュリオちゃん」
「はい」
手を軽く引くと
それはもう見目麗しいお顔が近づく
そうそう
ゆっくりゆっくり唇に触れる
離れる時に、良い子と言うと
子供みたいに無邪気に笑う
「よく出来ました」
「はい」