その指先

















「ええ、そうですね。だったら・・」
携帯がなってから、幾分か過ぎた。
さっきから、痛い視線を感じるから、振り向くと、
彼はあからさまに不機嫌な顔をしてこちらを睨みつけていた。
だいぶご立腹のようですね。

目があうと興味がないといった顔で、
彼は、ソファに座ったまま、視線を窓の外に向けた。

「そうですか・・」
携帯はまだ切れないから、そのまま、ソファに近づいた。
そして、空いている左手で頬に触れた。
「何」
声色は随分低く、遅いと目で言われている気さえする。
返事はせず、そのまま頬を撫でると、
目を細めて、物欲しそうな顔をされる。
携帯を肩に押し当てて、口付けた。
「っ・・・ん、」
そしてすぐに唇を離した。
「ねえ、いつまでしゃべってる気」
「すぐ終わらせますよ」
「ふーん」
そして、また口付けた。
「んんっ・・・・ぁ、はぁ」
舌を絡めて、頬に触れていた手を頭の後ろから、
押さえつけた。
「んっ、んぁ・・」
携帯がうるさい。
唇を離した。
「ええ、聞いてますよ。」

何事もなかったかのように、
彼はまた外を眺めた。
名残惜しいから、左手の指を相手の指と絡めて。
ソファの隣に腰掛けた。
指を舐めたり、キスしたりしながら、
話が終わるのを待った。







それから、また少し時間がたって、
「ええ、それでは、また。」
やっと、携帯を切った。
「遅い」
「すみません」
絡めたままの指にまた、キスを落とした。
そして、今度は彼に口付けながら、
押し倒した。
「何すんの」
「何をして欲しいですか?」
「言って欲しいの?」
「何でもしてあげますよ?」
にっこり笑うと。
彼は意地の悪い笑みを返して、
「言わないよ」
「なら、言わせるまでです。」

あとは、言葉なんていらない。





何て事無いただの日常。