伝心











	

「っ・・・・血?」

やばい、また来た

「血・・・」

待って、ダメだって

目の前がどんどん霞む

「血だぁ」

も、むり

「あ゛はぁ・・っ」

紅く紅く染まる

「おいベルっ、落ち着け!」

この手も、ナイフも、空も、あいつも

全部、全部が

「っ、・・くそ」

肉の裂ける声

飛び散る紅の

ループ

ずっと、ずっと

心臓の音

ぎりぎりした声

ああ


「ぁがっ、い・・・てぇ」


「もう終わった」


「ああ?邪魔すんなっ」

一頻り暴れて、動くものが無くなったら

肉の塊を刻みだす

血が枯れ

うめき声が止み

心臓が止まるまで

繰り返す

「やり過ぎだぁ」

「全っ然、足りねえよっ」

「ベル」

「何?お前が相手してくれんの?」

「帰るぞぉ」

「っ、離せって!」

「いい加減にしろっ」

引っ張られていた腕を離されて、

頭の後ろを思いっきり掴まれる

「っ・・・んぁ、や・・だ」

血まみれの手でスクアーロの髪を掴んだ

「・・ん、んっ」

「ほら帰るぞ」

「・・・ざんけんな、馬鹿鮫っ」

「うるせえ、置いてくぞぉ」

そう言って、血に濡れていない手で撫でられた

そうだ、また飛んでたんだ

紅い水溜りの中に自分がいて

血とか肉とかの生ぬるい香りがして

手に着いたこの紅も

きもちわるい

「ベルっ」

「・・あ、何」

「帰るぞぉ」

その手は、俺のせいで汚い血に濡れて

それでも、何も言わずに俺を連れて行く

紅い紅い水溜りから

灰色の空の下に

お前は

その手を離さないって、誓ってよ


「ベル、ルッスーリアから伝言だ」

「ん?」

「チョコケーキがうまく出来たんだと」

「しし、じゃあ王子が食べてやるって伝えてよ」

「ああ」

どろどろの紅い世界から灰色の空の下へ

「スクアーロ」

「なんだぁ」

「王子が何言いたいか、わかるだろ?」

切り刻まなくても

「・・・」

言葉にしなくても

「ったく、さっきまで飛んでやがった癖に」

伝わることを知ってる

「ししし」

「行くぞ」

「なあ、スクアーロ」

「なんだ?」

「王子さ結構、好きだよ」

「ああ、わかってる」

でも、伝えたくなるは、まだ知らない