Amore molle
















あれ、何だっけ
何が?
ん?
そこまで考えて
「ま、いいか」
ドアを勢いよく開けた






まーた、地味作業か
「帰ったのか」
「まーね」
そう言って、隣に腰掛ける
「早かったな」
「当然」

ほんの少しして、何か書いていた手が止まる
あ、何かめどくせー顔
大して興味は無いから、
肩肘を突いて、スクアーロの書類を覗いてみた
次の任務の陣形
各部隊の配置、偵察隊の・・・
「・・・・めんどくさ」

相変わらず、視線は書類から離れない
から、腕を引っ張った
「・・何だ?」
「別に」
スクアーロの手で遊ぶ
指を絡めたり
「・・・おい、ベル」
「うるさい」
そのまま口に運んだり
舐めたり
「どうした」
「ん、ん?」
指先を吸う
「いい加減にしろぉ」
指が離れる
あーあ
「・・暇」
「そーかよ」
「ヤる?」
「お前・・」
深いため息
でも、すっげー悔しそうな顔
勝手に口角上がる
「遊んでよ」
「仕事中だぁ」
「は?つまんねーよ」
折角今日の任務早く終わったのに
「なーって」
返事も返ってこなくなる
「マーモンとこ、行ってくる」
行く気はない、それはスクアーロもわかってる
だから、動かずに、じっとスクアーロを見た
「・・・・」
「・・・・」

口が少し開いて、でもすぐ閉じて
段々と、ばつの悪そうな顔になる



「向こうの・・・」
「ん?」
「棚」
「・・・が、なに?」
スクアーロにしては、歯切れが悪い
「見て来い」
「は?」
「いいから」
「はー?なんだよ」
キッチン近くの棚へ
暇で仕方ないから、歩く
王子歩かせるとか、ありえねーっての
「棚のどこだよ?」
「・・2段目」
「ん?・・・なにこれ」
開けろと声がする前に、リボンを解いた
包装を破いて、適当に捨てる
と、すぐ甘い香りがした
それだけで、中身が菓子だということはすぐわかる
無言で箱を開けると
「ん?ぁ、これ」
「それで、ちょっと黙ってろ」
バスケットに詰め合わせの
フィナンシェやパウンド、ビスコッティにマシュマロ
なんで、こんなに沢山?
この量は、
「なー、今日なんかあんの?」
大事に大事にバスケットを抱え、
スクアーロの隣にまた座る
「あ?ハロウィンだろうが」
「・・・・へー、準備したんだ。わざわざ」
「なっ、お前あれだけ」
バスケットのお菓子から、視線をはずした
「ん?」
「お前忘れてたのか?」
「・・・・俺、何か言ってたっけ?」
「菓子よこせとか、いたずらがどーとか」
「そっか、忘れてた」
「お前な・・・」
そうか、ハロウィンのこと忘れてたのか
なんで忘れてたんだろ
横でため息が聞こえる
「これ食ったら、いたずらできないじゃんいいの?」
「何だ?」
一度目が合ったけど、すぐ逸らされた
「別に」
「・・・これが終わるまで、だ。その位なら持つだろ」
「あー、馬鹿鮫も頭使ったんだ」
「はっ、覚えてろよ」
「ししし」
髪をくしゃくしゃと撫でられた。
まずは、ビスコッティを口に含む

3日前急に仕事が入り、今日は帰れないって話で
そのせいで、今日のハロウィンは帰れないことになった
けど、実際任務は、1日で終わって、
スクアーロに会えるって思ったら、忘れてた。
うわ、だっせ俺

勢いよく菓子を口に入れる
口の端からかけらが、零れ落ちる
床や、バスケットや、テーブルに
「きったねー食い方だな」
「うるせー」
「なあ」
「なんだ」
「・・・食う?」
二枚目のビスコッティを咥えて、スクアーロに突き出す
「は?誰がそんな甘いもの」
「んー」
肩を軽く掴んで、引っ張る
「ったく」
仕方ねえなって笑う
少し唇が触れる距離でビスコッティの割れる音
甘い香りが漂って
目が合った
頬に手が触れて、唇を舐められる
「ん、ふぁ・・・何、仕事いいの?」
また、ばつの悪そうな顔
「・・っ」
「しし、ま、菓子なくなるまでなら我慢してやるよ」
「おお」

今度はマシュマロを口に含む
「ん、んま」
何かのリキュールの味、キャラメル?
「スクアーロ、これうまい」
また、肩を掴んでこっちを向かせる
「ん?」
少し唇を開けば、舌が入ってくる

肩に寄りかかって、バスケットから一つ
口に含んで、腕を引く
「んー」
「・・・・」
たまに、舌を吸われたり
唇を甘噛みされたり
その繰り返し

折角、早く戻ったんだから、
「早く終わらせろよ」
「ああ」






















	







Amore molle:優しい愛