仰せのままに


















毎年のこと、特別何かして欲しいことも、
浮かばなくて
折角休みだし。
どうせ外雪だし
だったら、

「ふー・・・」
ドアを開ければ、白い湯気。
髪も肌も濡れたままバスロープを被る



何かが焼ける音
と、トマトとチーズの香り
「・・なに?それ」
「あ?って、少しは拭いてこい」
そう言って、大きめのフードで頭を掴まれた
「うわ、」
反射的に下を向くと、床には軽く水溜りできていた
足も、濡れてる


「ほら、」
そう言われて今度は顔を上げた、
前髪をかきあげられる
「ん」
「・・さっさと着替えろ」
ぽんぽんと、フード越しに触れる
「んー」
ぺたぺたという足音も、どうせ途中のカーペットで止む
キッチンで軽くため息が聞こえた気がするけど、気にしない
今日は特別。
そのまま、ソファに沈み込む

目が覚めた時から、外は雪が降っていた
「・・寒そ」
去年がどうだったかなんて忘れたけど、
いつも雪が降ってるような気がする

数分も経たないうちに、テーブルに今日のランチが届いた
ファルファッレのパスタ。
蝶々って、似合わな
リーフまで添えてあるし
スクアーロはテーブルに皿を並べていく
こいつ、ほんとマメだよなー、
なんて、思いながら眺めていた

「うまそー」
フォークに手を伸ばす
ソファの上で膝を抱えたまま、
腕だけでパスタを口に運ぶ
「ベル」
「ん?・・あ」
当然、ポタポタと赤いソースが垂れる
湿った前髪が目に降る
真っ白なテーブルクロスとソファに綺麗な紅

「だから、着替えろって・・・」
そう言う声音もいつもより柔らかいから、
気にしない
そのまま腕だけ伸ばす
「うまいじゃん」
「そうかよ」
今日は怒鳴らないから
「ん、喉、乾いた」
「ああ・・ほら」
コップに注がれた紅茶
「ん」








次の任務がどうとか、
雪が降ってるとか、いつもと変わらない会話で、
たまにナフキンが口元を拭う
フォークを置いた
それを合図に、スクアーロは皿を下げる
そして、今度はドルチェを持ってきた
イチゴのクロスタータにジェラートのっている
「あー」
軽く口を開ければ、ジェラートが口に届くのは当たり前
甘い、
イチゴのジャムと混ざって
頬を溶かす
「そんなに旨いか」
「ん」
軽く口を開ける
クロスタータも届く
ゆっくり味わって
繰り返す



「ん?」
「いや、・・Tanti Auguri a Belphegor」
「ん、Grazie」
軽い口付け
また口を開ける
笑い混じりの溜息のあとに、
ドルチェが、
「まあまあってとこかな」
「ったく・・」
いつもこれなら、少しは言うこと聞いてやるのに
顔が緩んでんだよ、馬鹿鮫
「ししし、あー」
「はいはい、ほら、Un principe」
甘い香りと、たまに口付けとを
繰り返す
「ん、ふふ」

これ位、当然でしょ



















Tanti Auguri a 〜:誕生日おめでとう Grazie:どうも