大好き












例えば、
「なぁ、ハルヒ」
僕らの前に、決して半分に分けられないものが出てきたら
「殿がさ、・・」
光ならどうするの?
「な、馨」
「・・うん、そう。おかしかったよ」
「流石先輩というか、」
こうやって、日常を過ごしながら、
頭の中では、いつも非日常が取り巻いていて。
もしかしたらとか、本当は違うんじゃないかとか、
わけのわからないことを考えては、
誰も居ないところに問いかけて、問いかけて、
何一つ帰ってこない返事を待っている。



そんな事を考えて途方にくれてると、
「馨?どうした、気分でも悪いのか?」
「あ、ごめん。大丈夫だよ光。」
「無理すんなよ」
「大丈夫だって。」
ねぇ、光?
言葉には出さないで、その背に問いかけてる。
もし、二人でわけることが出来ないようなものが、
それが、僕らは凄く大事だったら。
僕はきっと光に譲ると思うんだ。
光ならどうするの?

声に出せないのは、都合の悪い答えを聞きたくないから。
それでも、その背に問いかけるのは矛盾してる。

「馨?」
「あ、何?」
真っ黒でどろどろした頭の中から、いきなり引き戻されて、
もう、家に帰り着いていたことに気がついた。
「別に、何も無いけどさ。何か今日変だよ」
「ごめん、ちょっと考え事してた。」
「何を?」
「ん?ん〜」
「なんだよそれ」
「あはは、そういえば、明日さ・・」
「はぐらかすなって」
両手で頬を挟まれて、それに吃驚して、
僕は何もいえなかった。
「俺に言えないことかよ」
「違っ」
光が泣きそうな顔をする
「じゃあ、言えるだろ」
「・・うん」
「ほら、」
光は手を離し代わりに、僕の両手をぎゅっと握った。
だから、僕も握り返して、
「・・もしもの話。」
多分声は少し震えてる。
「うん」
「もし、僕らの前に二つに分けられないものがでてきたら、」
「うん」
「・・・・光はどうする?」
光はじっと僕の目を見つめる
「それって、半分に出来ないの?」
「うん」
「無理矢理半分にすればいいじゃん」
「できないんだよ」
「絶対?」
「うん」
困ったような顔で光は考えてる
「じゃあ、いらない。」
「だめだよ、僕も光もそれが大事なんだ」
「なら、二人で大事にすればいいじゃん」
「それもできない、どっちかだけ」
「だったら、やっぱりいらない。」
「僕も光もそれがいるんだって」
「だから、いらないっ」
「光?」
「だってそれ、俺が手に入れたら馨が困るし、
馨が手に入れたら、僕が困る」
「うん、そう」
「だったら、いらないって。」
「なんで?」
そんなのおかしい。いらなかったら困らないのに。
「だってさ、それで馨が泣いたら嫌だしさ」
そう言って、光はニッと笑った。
「ずっと、二人で居るって約束しただろ」
「光」
「大事なものが出来たって、一番は馨じゃん」
「ほんとに?」
「うん、だからいらない。」
「うん」
涙が出そうになって、あわてて目を瞑った。

「そのかわり、馨にもあげないよ」
「うん、わかった」
「馨は優しいから、俺にくれるかもしれないけど、
でも、馨が悲しむなら俺は要らない」
「うん」
「それで、馨にもあげない」
「うん」
「わかった?大丈夫?」
「うん」
両手は握られたまま、頭だけ預けて光に寄りかかった
「馨?」
「光ありがと、大好き」
「うん」


二人で一つだから、
全部何でも半分にわけるけど。
どうしても分けられないのなら。
僕はいらないし、光もいらない。
二人居ればそれでいい。
それだけでいい。