欲しがり屋



























誠凛に来るのも
黒子っちや火神っちとバスケするのも
楽しいけど
それでもまだ
足りないらしい

「火神っちはいいね」
「・・あ」
「ちょっと羨ましい」
突然
「・・何が」
「はは、あ、黒子っちお帰りー」
「上げませんよ」
「・・・」
どうやら聞こえていたらしい
「僕も、彼も」
「・・そっか」
「だから何の話だよ」
「火神君痛いです。頭掴むのやめてください」
それすらも羨ましい

一つでいい
友情でも愛情でも何でもいい
友達でも恋人でも兄弟でも
ライバルでも相棒でも
どれか一つでいい
一つでいいから頂戴よ
ねえ

「ほら、黄瀬君お迎えです」
「ん?青峰っちどうしたんスか?」
「どうしたじゃねえよ、帰るぞ」
「うを、え、ちょっと」
腕を思い切り引かれる

「いつの間に呼んだんだ?」
「いつものことですよ」
「お前らさ、仲良いの?悪いの?」
「悪くはない、ですよ。良くもないですけど」


ほんとにしんどい時にヒーローみたいに現れたり
励ましあったり、笑って、泣いてを共感して
夢中で頑張るとか
そういうのが多分欲しい

「いつもテツが言ってたぞ」
「なに、を?」
「隣の芝生は青いって」
「青峰っちが頭良さそうなこと言ってる・・」
「流石に毎回言われりゃ覚える」
「ふーん」
「人の物が欲しいときは自分の持ってる物が見えないんだと、同じ物持ってても、違って見えるんだと」
「・・俺何も持ってないもん」
ずっと引いてくれてた腕を離される
「・・・」
「青峰っち?」
「・・置いてく」
「やだっ」
「だったら余所見すんなボケ」
今度は俺が青峰っちの腕を掴む
「だって・・・」
「うぜえ」
振り解かれそうになるけど
それでも欲しいもんは欲しい
「だって皆持ってるじゃん」
「お前ホント我侭な」
「・・・酷いっすね」
「・・本気出さねえからだろ」
「出す前に出来ちゃうんすよ」
「甘ったれんな、外行きゃ上なんていくらでもいるだろうが」
「・・・でも」
「適当なとこで止めっからそうなんだよ」
「でもさっ」
青峰っちの前に立つ
「・・・・」
「今はちゃんとあるっスよ」
「・・・」
「居るよちゃんと」
「・・・・」
溜息を一つつかれて、高速エルボ
「え、うがっ」
「はいはい」
「痛い痛い」
「だったら道草すんなつってんだよ」
「・・はは、すんません」
だってね
それでもやっぱ欲しくなるんだよ
俺の手の中にはまだ
何一つ無いんだから
だから早く
早くあんたに並びたい