憧れ不純



























IH決勝リーグの初戦
試合終了のブザーが鳴る
今の誠凛には、まだ勝つ要素が足りない
「当然の結果だな」
「っスね」
緑間っちの言葉に感情は乗ってない
ただの事実だ
「お前・・・」
「なんすか?」
「嬉しそうに見えるのだよ」
「・・・そうっスか?」
青峰っちが勝って
黒子っちが負けて
結構複雑なんだけど

でも本音は
もっと早く、強くって
見てるだけでもう血が滾って
今すぐにでもって
だって次は

「以前お前は聞いたな」
「?」
「あれだけのプレーが出来れば、アイツは楽しくて仕方ないだろう、と」
「よく覚えてるっスね」

「少し考えればわかることなのだよ。お前は出来過ぎることの虚しさを知っていたのだからな」
「・・まあ」
「それなのにお前は変わらなかったのだよ。まるで気づいていない素振りだった」
「嫌なやつだって言いたいんスか?」
「文句を言うつもりは無い」
「そっスか」
「そもそもお前が良い奴だと思った事はないのだよ」
「ひでえ」
まあ、それも事実だけど
「そう言いながら、微塵も悪いと思っていないところだ」
「ん?でも、どうっスかねえ。
青峰っちみたくこれしか無いっての、俺には無かったし。
多分ちょっと違うと思うんスよね」
「あいつはまだ苦しんでいるのだよ」
「・・うん」
知ってる
でもその苦しみが
孤独が
青峰っちを強くするんなら
俺は
どっちを望んでるだろうか
倒れないように手を?
届かない所へ高く?

思わずにはいられない
もっと
もっとって

「ってか、俺は昔から自分のことばっかスよ」
「だからお前はダメなのだよ」
「そうやってすぐ全否定するのやめてほしいっス」

だって青峰っちにはこれしか無いから
逃げも下りもしないだろうし
離れられないだろ
そもそも
俺に救われるようなあんたじゃないし
俺の手に縋るようなあんたでもない
一人でも続ける
けど
でも
「だからかっこいいんスよ」
「・・・・」

それに
俺はまだ追いついてない
隣に並べていない
追いつく前に辞められたら
俺の意味なくなるでしょ

「・・・お前も大概なのだよ」
「そうっスか?」
お前もって、ほかに誰が含まれてるんすかね
「お前が視界隅にでも入っているのがアイツには救いなのか、それとも」
「大げさっスよ」
「・・案外一番の性悪はお前かもしれんな」
「なんスかそれ」
「一つ忠告してやる、お前の悪い所だ」
「?」
「・・企みが顔に出ている」
「ご忠告どーも」
頬に手を触れてみるけど
もう意識したあとだからか
喜んでいたのか、
悲しんでいたのかわからない

だからまだ
まだ終わらない
憧れはまだ
あんたを追い詰めても尚
終わらない