気まぐれ杞憂



























突然
『ちょっと付き合え』
とだけのメールが来た
元々長文のやり取りなんてしないし
つか、青峰っちからメールくることとか少ないし
だから
ああ
とうとう来たって
『電話するっスか?』
って送ると
『いや、そっち行く』
って
ああ
これは
本格的に
終わったわ


「・・よお」
「久しぶりっスね」
「んじゃ行くぞ」
「・・ういっス」

連れてかれたのはバスケコートだった
らしいっつーか
なんつーか
「ほれ」
「・・・ん?」
ボールを渡される
最初もこれで
最後もこれかって
「やんぞ」
「え、はいっス」


10分20分30分
1時間
いやもう何時間だろ
「もー、やっぱ勝てねえ」
「ったりめーだろうが」
「試合の時は点とったのにっ」
「・・・」
青峰っちは背を向けて
ゆっくりドリブルする
「・・・試合見てただろ」
「黒子っちとのっスか?」
「おう、負けた」
「・・うん」
「けど、多分嬉しかった」
「うん」
「あと、結構悔しかった」
「そりゃあ、そっスよね」
「・・・・」
「俺、あんたが負けるとこ初めて見たっスよ」
「・・・・」
「・・お前来る前にな」
「・・ん」
どちらともなく
約束したわけでもなく
追い追われの距離
面と向かってやりあえるのは俺だけだったから
それはずっとこの先も
ずっと続いていくんだと思ってた
俺は
背を追いかけてるのが楽しくて
あんたが勝つのが嬉しくて
吹っ切るのも本気になるのも
ほんと遅かったな
「おい」
「・・・」
そんで
それが
こんなに悔しいと思わなかった
「・・黄瀬?」
「リベンジ」
「・・・・」
「もち、する気だったんスよ」
「・・悪かったな」
「らしくないっスね」
「うるせーよ」
でも思うんだ
俺があんたを越えたとして
あんたがバスケを続ける理由は作れても
それ以外のことは何も
解決しないし
できないし
だったらこれが
一番綺麗で
いい結果で
結末なんだろうなって

今はもう
あの試合結果がどうなってても
バスケを続けるし
もうちゃんと好きだし
あんたがいなくなっても
は、言いすぎだけど
それでも多分
これからも続けていこうって
思える位には
ちゃんと好きになれたんだ
いつの間にか


嬉しくて
寂しくて
「何泣いてんのお前」
「悔しいんスよ」
「そ、か」
「・・・・」
「お前が。そんなよく泣くとか知らなかったな」
「・・・・」
そりゃあの頃は
泣く理由なんか無かったんだから
青峰っちはしゃがみ込んで
軽く叩くように頭に触れる

あんたそんなだから
優しいさが不器用だから
ちゃんと
「わかってくれる子捜せよ」
「・・・・なにが?」
「・・・・・え?」
「なにが?」
「なにがって・・」
「今バスケの話してたろ」
「・・え、別れ話じゃないんスか」
「なんでだよ」
「・・うっそ」
「つか、おい付き合ってたのか」
「マジっスか」
「おい・・」
「うっわ、凹み損スか?」
「はは、ばっかだなお前」
「だって、あんたが話しあるとか言うから」
「ちょっと付き合えつっただけだろ」
「そうだけどー」

「何か暗いと思ったんだよ」
「つかすっげー今日考えてたのに」
「だっせーの」
だってバスケ馬鹿の癖に
バスケ中心で回ってるくせに
なんだよそれ
「もー」
「んなもん心配してたのはこっちだっての」
「ん?」
「つーか、お前には負けてねえだろうが、何勝手に終わらせてんだよ」
「そう、っスね」
確かに

「あー笑った」
「泣き損っス」
「はは」
「笑い過ぎっスよ」
「んじゃ、デートでもすっか」
「ええ!?」
そんな銘打って出かけたことなんか無いのに
付き合ってるって約束だって
「なんだよ」
「因みに何するんスか?」
「・・・」
「青峰っち?」
「そりゃあお前・・」
「?」
目一杯視線を泳がせて
「・・・・ばす、け」
「馬鹿」
「てめっ」
「あんたホント馬鹿っ」
そんで
その照れて居心地悪そうな顔が
「好き」
「あ、あ゛?」
「ふは」
「おっまえなあ」
この人が好きだ

「そっスねー。ま、定番は遊園地、映画観たり、買い物とか?」
「取り巻き情報だろ、つかもう日が暮れんだよ」
「公園?」
「隣公園」
「じゃあ、バスケコートで」
「それここ、お前も大概馬鹿な」
「いいじゃないっスか」
「・・・あ、いいや、とりあえず飯」
「賛成っス」
「色気ねえな」
「お互い様っスよ」
「・・・よし、奢ってやる」
「はは、デートっぽい」
「飲み物だけな」
「ええ!?」
「冗談だよ」
「ふふ」
なんだよもう