千変万化の手前





























何かまたちっと変わったな
「あ、青峰っちじゃないスか」
「よお」
「また青峰っちと当たっても負けないっスよ」
「何すかしてんだ」
「俺もう海常じゃエースなんで」
「お前がエースねえ」
「そっスよ」
「・・・」
「なんスか?」
何か
いつにも増してすかしてんなあ

「無理してんじゃねえの?」
「・・んな、こと」
はは、顔つくりそこねたな
左手で触れようとしたら
手首をつかまれた
生意気になったな
勝つと言わず
手をはらわなかった時点でお前の負けだろ
つか、握ったまま離せないなら
大人しくしてればいいのに
「黄瀬」
「・・っ」
手に力を入れると
息をのむ音がこっちまで聞こえる
「ダメだって」
「何が」
「俺は」
「何」
「ちゃんと、俺は」
「・・・」
「だって、絶対、ダメになるって」
なればいい
「あっそ」

「ね、ちょっと」
手をひこうとすると、今度は黄瀬の手に力が入る
「わかったから離せよ」
「・・・ぁ」
一瞬でもはたく位の力を入れれば
触れるのなんか簡単なのに
触れさせないくせに
離せないってお前
そんなのもうさっさと
「ダメになればいいだろ」
「え」
勢い良く腕を引くと
そのまま黄瀬が付いてくるから
抱きしめる
「やだって」
「暴れんなっ」
肩がはねた
へたれ
「別にとって食うわけじゃねえよ」
「そ、だけど」
「お前何そんな気ぃはってんだよ」
「んなこと、ないっス」
「つか、何か久しぶりだな」
「ちょっと、も、」
肩口に口を寄せると
申し訳程度に腕をつっぱって
無駄な抵抗だ
「何がしたいんだよお前は」
「だ、から俺は、ちゃんと」
「出来てんよ、気、はりすぎ」
「ほん、とに?」
「おー」
「・・・」

「っと」
落ちるの必死にしがみつくみたいに抱きついてきた
「あー、も超触りたかった」
「あーそう、つか拒否ってんなよ」
「だって俺ちゃんとしなきゃって思ったら何か」
「何ルールだよ」
「わかないっスよ」
「めんどくせえ」
「つか久々すぎてやばい、青峰っち超好き」
「・・・」
「好き」
「お、おーびっくりさせんな」
「俺絶対負けらんねえじゃん」
「ったり前だろボケ」
「ん、何か安心して帰りたくなってきた」
「ふざけんな」
「冗談っスよ」
「そうかよ」
「ん、行ってくるっス」
「おー」
離れる前に手の指を絡める
「またね」
「ん、行って来い」