吐くほどに




























世の中言っていいことと悪いことがあって
時と場合によって使い分ける

不安は言葉にしちゃいけないし
失敗した時のビジョンは試合中に考えちゃいけない
不安は言葉にしちゃいけない

だから、例えば
メールの返信遅いのいつものことだし
電話中でも多分黒子っちとかだし
ちょっとブラブラしてくるって言われたら言葉通りで

それでも
どうしても
不安になる
不安に
不安
でもひとつでも口にしたら
一瞬で崩れる
簡単に壊れる
気がして
今日も
いつも
口に出せない

バスケばっかしてた時は
そんなこと微塵も考えなかったのに
今日どこ行ってたのとか
誰と電話してたの、とか
そういうのがぐるぐる回って
苦しくなってしんどくなって
どうしようもないのに
吐き気が来た瞬間
あ、止めたほうがいいのかなって
思ってそれで
そのまま伝えたら

「お前付き合ったこと無いだろ」
「え、、はあ?今そういうこと」
「そういう話だろ」
「・・・」
「お前女と付き合ってたときなんでもうまくいったのかよ。
電話繋がんなかったら、相手誰だとか、泊まりの旅行は、友達となのかとか、
二人っきりでも、相手友達なのかとか、そんなこと言い出したらキリねえだろ。」
「それはそうっすけど」
「今どこで誰と何してるとか、あ、あれつけとよGPSの前流行ったやつ」
「そうじゃないって」
「はあ、けどまあいいや、言いたい事はわかった」
「青峰っち」
「お前もう諦めろ、無理だわそういうの」
「え、ちょっと」
それって
「ああ、そっちじゃねえよ」
「そっちって」
「あと不安溜め込むのもやめろ、一気に投げられっと面倒くせえわ」
「なに」
「いつかは変わるかもしれねえけどな、性格とか?けど矯正とかする気ねえから」
「何言ってんのわかんないっすよ」
早口でどんどん言葉が流れて言って
ついて行けない
「つかお前いつもの自信はどこ置いてきたんだよ」
「・・だって」
「逆は考えねえのか」
「何を?」
「お前が愛想尽かすかもとか」
「・・・」
「何お前、実はネガティブか?」
「考えなかった」
「あーそう」
「うん」
「言っとくけど俺のが好きだからな」
「う、そ」
「何が嘘だボケ」
「あ、そういう意味じゃないっす」
「つか、ま、いいや」
「おれ」
「もうちっと考えろよ、ちゃんと帰ってくるだろ」
「うん」
「別れるとか言った事ねえだろ」
「う、けど、付き合うも言って無いっす」
「・・・マジか」
「あんたそういうとこだよっ」
「うっせーな、じゃあ付き合う」
「じゃあってあんた」
「何年一緒いんだよ、察しろ」
「察した結果っすよ」
「揚げ足ばっかとりやがって」
「ふふ」

口喧嘩が段々
ただの世間話みたいになっていく
「つか、どんくらい好きかじゃなくて、どこまで許せるかだろ」
「・・・そうすか」
「じゃねーの?お前の交友関係が心配になってきた」
「なんすかそれ」
「あ、あと吐き気で思い出した」
「なに?」
「さつきが言ってた、テツが好き過ぎて考えてると吐きそうになるってよ」
「まじ、で」
「お前さつきと飲んでくれば?」
「そう、かも、うん」
「それなら俺も安心だ」
「安心?」
「そ、んで、俺はテツと飲みに行く」
「え、だからあんたさ」
「冗談だろ」
「・・そ、すか」
「遠慮したらしたで、めんどくせえ」
「だって」
「ばーか」
「う、」
「言い返さねえの?」
覗き込まれる
「今日は、っすよ」
「ふーん」

「つかお前が別れ話とか生意気なんだよ」
「なんすか、それ」
「珍しく真面目な顔してっからガキでも出来たのかと思ったわ」
「できねえよ、バカ」
軽くパンチすると
その手を掴まれる
「知ってんよ」
「・・青峰っち」
「ん?」
「好き」
「それも知ってる」
「うん」