ほんの少しの焼きもち

























休憩の合図で
タオルと飲み物を渡すのが日課だった
今までは

「青峰っちー」
「またかよ」
「さっきのもっかいやってほしいっス」
「やらねえよ」
「えーケチー」
隣のコートで紅白戦やってたのに
それでも視界にいれてたのかな
パス、シュート、フェイントその他何でも
何か気に入ったものが有ったみたい

「うっせえな、どれだよ」
「こうやって、こう、何かスパって」
「あー?これか」
「そう、それっス」
きーちゃんの目の色が変わって
そのたった一回で吸収しようとする
覚えるのが早いんだろうなあ、きっと

あ、休憩終わった
「あ゛、テツ、水寄越せ」
「知りませんよ」
「くっそ、おい、黄瀬」
「うえ?何、何スか?」
ちゃっかり水を飲んでるきーちゃんから
それを横取り
「う、わ青峰っち?」
「・・・」
「飲みすぎっスよ」
「お前のせいだろうが」
「えー」
「黄瀬君次僕達ですよ」
「・・うぃーっす」
一度でいいからその中に混ざってみたい

「大ちゃんいいなー」
「あ?」
「きーちゃんもテツ君もそう」
「大ちゃんとバスケしてる時すっごく良い顔するんだから」
「・・・・」
「焼けちゃうなあ」
「あー、わかんね」
「そうでしょうねー」
それが当たり前なんだから
わかるわけないよね
「わかんねえけどよ」
「ん?」
「黄瀬」
「はいっす」
「テツ」
「何ですか?」
「さつきが呼んでんぞ」
「え?え?」
「何すか?」
「なんでしょう?」
「ちょっと大ちゃん!?」
「お前が呼べばあいつらすぐ来るじゃん」
「ええ?」
「一緒だろ」
ぽんと頭を叩くと
当の本人はコートに戻ってしまった
「ちょっとー」

「まーた青峰っちが何かしたんすか?」
「全く青峰君は」
違う、と言えばいいのに
嘘でもその輪に混ざった感覚を味わいたくて
「んじゃ、俺が桃っちに一矢報いるっす」
「黄瀬君勝ったこと無いじゃないですか」
「ちょ、黒子っちー」
「仕方ありません、僕も手伝います」
「わーい」
「桃井さんのためですよ」
「きゃ」
「ええー」

楽しい
楽しいけどほんの少し
ほんの少しだけでいいから
それでも焼かせてほしい
「じゃあ、行って来ます」
「あ、黒子っち待って、桃っち行ってくるっすね」
「うん、二人とも行ってらっしい」
混ざれないのは我慢するから