倦怠期




























「殴ったってほんとスか?」
「さつきか」
「誰でもいいだろ、どうなんスか」
「・・・・殴った」
「はあ」
大きくため息をつく
「お前試合は」
「終わって皆帰ったよ」
「あ、そう」
「どうせあんたのことだから、ショウゴ君がコートで何やってたかも大体わかってんでしょ」
「・・・・」
「手は」
「なんだよ」
「大丈夫なんスよね」
「まあ」
「ほんとマジ殴るよ」
「・・・」
「だめだよ」
「・・・悪かった」
「ほんとっスよ」
「ショウゴ君もショウゴ君スけど、あんたもあんたっスよ。
これで次試合出られなくなったりしたらどうすんすか」
「なんとかなんだろ」
「・・・・あんたさ」
「なんだよ」
「自分はもう終わったとか思ってんじゃないスか?」
「・・・」
終わってんだろ
少なくても今シーズンは
「はあ、俺の憧れてた青峰っちはどこ行ったんスかね?やっぱ、火神に負けるようじゃなあ」
「おっ前なあ」
「俺はさ、もう置いてくよ、その覚悟があるっスよ」
「・・・・」
「・・あんたが居ても居なくても」
それが
その目が
一番怖かった
もう映ってないんじゃいかって
それが
一番
怖かった
「悪かった」
「うん・・・ん?」
少し体重をかけるようにして抱きしめた
「はあ」
「何であんたが溜息つくんスか」
「お前今日うち来い」
「・・・・・しゃーねえなあ」
多分少しびっくりした顔して、
でも聞こえてきた声は柔らかかった

今まで散々勝手やって
都合いいことしてんのも
お前がどんだけ疲れてるかもわかってて
そういうのも、そうじゃないのも全部
「・・・悪かった」
「こんなの倦怠期みたいなもんスよ」
背中を優しく叩かれる
「ん」
いざ離れてみて
少しでも
寂しいと思った俺の負けだ
「青峰っち俺が思ってるより好きでしょ」
「さあな」
嬉しそうに頬をゆるませるから
それでもいいかって思った