言葉にもならないこと



























飲みもんでも取りに行こうかと思って
立ち上がった瞬間だった
「好き、なんだけど」
「・・・知、ってるけど?」
服の後ろを掴まれたのと
突然告白されたのと
あと、しんどそうな顔してたのとで
少しよろけた

「うん」
「・・・」
手をすぐ離すから
向き直って、とりあえず掴んでみる
「なに」
「なにはお前だろ」
「・・・うん」
「どした」
しゃがんで顔を覗くと目をそらすから
髪に触れてみた
「・・っ」
「んだよ、ちゅーでもしてやろうか?」
「いらいないっす」
「いらないってお前・・」
手、払わない癖に
「なんでもないって」
「んー、よっ」
軽くだけど額をぶつける
「った」
「・・・」
黄瀬が俯いてたせいで、
口までは遠い
「痛い」
「んな力入れてねえだろ」
掴んだ手を離すタイミングが見つからない
「青峰っち」
「んー?っと、おい」
首に手を回して引っ張るから
黄瀬にもたれる
子供がしがみついてるみたいだ

「気持ち悪くない?」
「何が」
「俺が、こんなんさ」
「何がだよ」
「わかんないっすかね」
「いつも言ってんだろ、わかるように言えって」
「うん、好きだよ」
「知ってるっつの」
「ふふ」
「あ、何お前、好きだって言われたいの?」
「お、青峰っちかしこいっすね、おしいっ」
「んだよ」
「んー、やっぱいいよ」
「何が」
「していいよ」
「・・・後でな」
改まると、意識すると
変に緊張して、しり込みするけど
「とか言って、何で押し倒されるんすかね」
「・・・別に、普通に好きだけどな」
何が気に入らないのか知らないけど
「・・・」
「俺が好きだって言ってんだから、他に気にすることないだろ」
「・・・うん、ないっすね」
「だろ」
「うん、あのね青峰っち、良いこと言ってるのに手が残念なとこにあるっす」
「気のせい、気のせい」
身を捩らせないように、体重をかけていく
「ちょっ、と」
「・・・」
口の端を吸って、離れ際に舐めれば
悔しそうな目で軽く睨まれるから
「んっ」
「・・なんつーか」
「な、に」
「泣かしたくなるな」
「・・」
黄瀬が意地の悪い顔をして、両手で頭をつかまれる
今度は口についたのに
唇を食われるみたいに、吸われるだけ
触れるのに、湿るのに、
口を開いて、舌を出すと離れる
「は、お返しっすよ」
「・・生意気してんなよ」
鼻をつまむ
「う、え?」
「・・」
そのまま口を塞いで、舌を入れる
体重がのってんのと、
息塞いでんのと
舌絡まって気持ちいいのとで
背中を叩かれる
「ん、ん、んぐっ」
「・・・・」
「っ、はあ、はあ、死ぬっ」
「いってえよ」
「も、馬鹿でしょ」
「泣くな、泣くな」
「泣いてないっ」
「俺は背中痛くて泣きそうだけどな」
「それは自業自得っす」
「思いっきり叩きやがって」
「この苦しさを青峰っちにも味あわせてやる」
「いらん」
「も、何か、どうでもよくなってきた」
「そーかよ」
ほらみろ
気になったり、ならなかったり
どうせいつものことだ