物言わぬ
























そんなになってもまだやめないんだって
あんたがそこまで頑なになる理由が
俺にはわからなくて
考えて
考えてたら
あんた一人置いてくわけにも
置いてかれるわけにも
やっと出来たものとか
捨てるわけにもいかなくなって
負けてもなお
楽しいとか
ちゃんと思えるようになってもまだ
他にも
好きができたのに結局
ここに戻ってくるのがやっぱり
そういうことなんだと思う

で家主はいつ帰ってくるのか
家の前で待つのも段々寒くなってきた

「おかえり」
「・・た、だいま」
「何きょどってんスか」
「何してんの、お前」
「んー?なんとなくっ」
「連絡しろよ」
「あんたいっつも勝手に来るじゃん、お返しっスよ」

「どうした」
「どうもしてないっス」
何も
どこも
誰も変わってない
結局
あんたは何も言わない
「暇人」
「黒子っちもあんたもホント素直じゃねえっスわ」
無表情作って
意地張って
「何でテツが出てくんだよ」
「つーか入れてよ寒いっス」
「へーへー」
「はーやーくー」
「っせえな」

ただついていけば
それだけで楽しかったのに
簡単に甘やかされてたのに
「お前」
「んー?」
俺大人になったかも
「なんでもない」
「んー」
それでも行動と
雰囲気とで
怒ってるか、そうじゃないか
喜んでるかとかは
わかるようになった
結局根っこが変わってないこと
誰も
ボールさえなければ
特に面白くも続かない会話が始まること
なのにボールさえあれば
会話も要らなくなること
特にあんたは楽しいって目が喜ぶこと

「なんもねえぞ」
「んー」
青峰っちの隣
ソファに座ってひっつく
追いかけるのが俺の長所
あと
「おい」
「いやー寒かったんスよマジで」
素直なとこも
「ふーん」
「・・・」
あ、照れた
ちょっと離れて見てたから
それが悔しかったけど
それはそれで得るものがあった
「飯」
「・・ん?」
「作ってやる」
「マジで!?」
「焼き飯」
「食べたいっ」
「ん」
すぐ台所へ向かう背に抱きついた
気まぐれなんだと思う
多分
「なに、お前そんな寒いのか」
「んー」
ぎゅーとしがみつくと体温に安心する
気にせず、あんたはどんどん歩くけど

あんたも黒子っちも満足する方法を
ずっと捜してた
「きーせー」
「んー」
どれも
あんまり上手く行かなかったけど
「飯いらねえの?」
「いる」
「んな寒いなら風呂入れば」
「待ってる」
「あっそ」

あんたからあんまり触らなくなった
代わりか知らないけど
引きずられるように台所へ行く
「何してんのお前」
「なんも」
触っても文句言わなくなった
気がする
左側肩口から顔を出す
「お前さ」
「なにー」
「ホントは何しに来たんだよ」
「・・構ってもらいに来たんスよ」
すぐほったらかしにするから
「いじけてたのか」
「そうじゃないけど」
青峰っちの左手が髪をさわる
負い目を感じてるんだろうか
俺や黒子っち、桃っちと居る時特に
火神と居る時は楽しそうにする癖に
何も言わないくせに
「お前」
「うん?」
「今度いつ休み?」
「・・さ、来週の土曜」
「良く覚えてんな」
「休み、少ないから、覚えやすいんスよ」
「へー」
「・・・青峰っち?」
「何かしたいこと考えとけ、行きたいとことか」
「まじスか」
「ん」
「なんでも?」
「おー、その代わりどけ、飯作る気が失せる」
「はいっス」
気分大事
すぐ離れて、横から覗く
「結局見んのな」
「うん」
雑だけど手際良く料理する様を見て
俺には無いとこに、どうやっても惹かれる
いっつも
「やりづらい」
「ふふ」
惹かれて
勝手なところに腹が立って
それでたまに
「あ」
「ん?」
「お前欲しがってバッシュ、下駄箱んとこ」
「えっ」
「やる」
「いいんスか」
「おー、つか俺入らねえよ」
「どうしたんすか、やっば超嬉しい」
妙に優しかったりするから
「この前さつきと買い物行った時見つけた」
「あーもう、すぐ使いたい」
「聞いてねえだろ」
「ありがとっ」
「おー」
結局惹かれる
何度も
あんたは何も言わないけど