世話の焼ける




























随分と温かくなって
桜の花が風に乗って、ストバスコートにも降る
少し肌寒さは残るけど、スポーツするならもってこいだというのに
誰もいないコートを、ベンチからただ見つめるだけ
ため息をつくと右に座る青峰君は足を組み換え
黄瀬君は身体をびくつかせる
彼らから僕へは通じるのに
僕を越えて話すことができない

「そいやテツ、さつきとまた出かけるのか」
「あ、はい。火神君と監督も。」
「へー」
「主にプロテインを買いに行くそうですが、僕と火神君は荷物持ちです。」
「ふーん」

「あ、黒子っち。今度また練習試合するって」
「ああ、聞きました。確か再来週」
「そうそう」
「今度は新レギュラーメンバーっすから、前回みたく出し惜しみはないっスよ」
「楽しみにしてます」

折角練習に来たのに、ドリブルもできない
横目で見ると、青峰君は明後日を、黄瀬君は俯き気味
帰ろうに帰れなくなっている様子

僕は影であって壁ではないし、翻訳機でもないんですけどね
飲み終えた空のペットボトルを捨てに立ち上がると、
両腕が掴まえられる
腹立たしいことに、この二人に掴まれると動けない
「どこ行くんだよ」
「どこ行くんスか?」
「はあ、いい加減にしてください。」
「・・・」
「えっと」
「何が原因なんですか」
「・・別に」
「いや、」
「ぶっ飛ばしますよ」
「・・・」
「あー、あの」
黄瀬君は結局黙り込み
それに舌打ちした青峰君が話し始めた
「・・・・こいつ今日仕事だっつうから、ぶらぶらしてたら、ここに居たんだよっ」
「いや、あの、仕事はマジだったんすけど、
高速で事故って渋滞してて、一緒に撮影する人送れるからって、午前中急遽オフになって」
「だったら連絡しろよ」
「だって、こういう時って開始何時になるかわかんねえし」
「けど、テツんとこには来てんじゃねんかっ」
「たまたまっす、ここそんな遠くないし、すぐ戻れるし」
「もう昼過ぎてんだけど?」
「う、それは」
「連絡位よこせバカっ」
「それに、もう用事入れてたらって」
「いれてねえだろうがっ」
「入れ違いになるかもしれないじゃないっスか」
「それでも会いたきゃ来るわボケ」
「っ、青峰っち・・」
今にも飛びつきそうな黄瀬君を制して
「で、僕のムカつきはどっちが受けてくれるんですか?」
「黄瀬だろ」
「うえ、いや、俺このあと仕事あ、」
タイミングよく黄瀬君の携帯が鳴るので、
つい舌打ちをしてしまった


「今日は休みになりました」
「ほらみろー」
「黄瀬君・・・」
「えっと、お飲み物をすぐに」
「そんなもんかあ?」
「黄瀬君もう一声」
「夕飯ご馳走させていただきます!!」
「おしっ」
「仕方ないですね。」
「でも、マジバね。ファミレスはちょっと無理っス」
「ファミレスならステーキセット」
「青峰君、新しいメニューで、牛豚鳥のステーキセット出てますよ」
「俺の話聞いてた!?」
「決まりだな」
「決まりですね」
いつもの拳を軽くぶつける
「ちょっとお」
「腹空かすためにも、やっか」
「望むところです」
「聞いてよ!ってか俺もやりたいっ」
「お前は先に飲み物買って来いよ」
「ワンオンワンです」
「くっそー」
「いいから行って来い」
青峰君は勢いよく黄瀬君の頭を撫で回し、背中を叩く
結局いつも通り

全く本当に