秋冷



























黄瀬君
多分
そう呼ぶ声が好きだった
誰に何言われても
崩れないで
折れても自力で
一生懸命生きてる所に
きっと惹かれた
多分
きっと
好きだった

「テツぼろぼろじゃねえか」
「火神っちと1on1させるからっスよ」
「本人が言ってんだから仕方ないだろ」
「俺もしたいなー」
「順番守れよ、次俺とだろ」
「わかってるっスよ」
「ホント、楽しそうだなあ」
「・・・」

気づいたのは遅かったのかな
いつからかなんて
わかんないし

「見すぎだろ」
「え〜?」
「お前ホントテツ好きな」
「ん?・・・うん、そっスね」
「・・・」
「・・青峰っち」
「あ?」
「俺振られたこと無いんスよ」
「・・・・」
「告ったことも無いっス」
「だろうな・・」
「けどさ、」
「・・・」
「これは、言っといても良かったかなって」
今頃思う
「・・そーかよ」

あんたと一緒になってから知った
多分俺は好きだったんだろうなって、
だからって、どうもしないんだけど
ってか、どうしたいわけでもないんだけど
ただ今頃気づいたのがなんだか
寂しいような、なんかもやもやが残って
少し気持ち悪い

「お前ら普通にパス練すんな」
「そーっスよ、交代っ」
「わかったわかった交代な」
「休憩、します」

黒子っち達が近づく
「お前足ふらついてんじゃん」
「何かテンション上がって」
「テツー黄瀬がガン見だったぞー」
「いーじゃないっスか、黒子っちとバスケしたいんスよ」
「ガン見はちょっと」
「え、引いてる!?」
「つか、黒子も黄瀬普通に好きじゃん」
「・・・まあ、」
と、溜息混じりに言う
黒子っちは、火神っちと居る時少し優しい
言葉が柔らかくなるね
「でもそういうこと言うと、黄瀬君調子に乗るんで言いません」
「黒子っち・・・」
「はは」
「こいついつも調子乗ってんじゃん」
「そうですね」
「んなことないっスよ」
「まあ、良いんじゃね?」
「おら行くぞ」
「いって、今叩く意味あったスか?」
青峰っちはボールを持ってコートに向かう
それを追いかける
「で」
「?」
「今はどうなんだよ」

俺のこういうとこわかってて
気づいてて
それでもそうやって
居てくれるやつが
「・・・」
「おい、黙んな」
「・・あんた以外誰がいんの?」
「はは、だろうな」
そうやってあんたは
褒められたみたく笑うから
今更どうこうしたいわけじゃなくて
何か変えたいわけじゃなくて
俺はただ
今頃気づいただけ
ちょっと切ないって
そんであんたがちゃんと好きなんだって
わかっただけ
ただ
それだけ