泣き虫
























さて、次は俺らかって気合いれようと隣のエースを見ると
緩みきった顔してやがる
ここで締めなきゃキャプテンじゃねえな
「ニヤつくなボケっ」
「いっで」
「まだ早えだろ」
「うえ?」
「まだ誠凛の前に試合あんだよ」
「わかってるっスよ」
「何お前、誠凛とやんのそんな嬉しいのかよ」
「あー、まあ」
「・・・」
歯切れの悪さに視線の先を追うと
「紫原っちが、なんか、泣いてんなーって」
「そりゃ悔しいんだろうよ」
負けて悔しくて泣く
んなもん珍しくもなんとも無い
「そうなんスけど」
「お前も桐皇に負けた時ビービー泣いてただろうが」
「ビービーって」
人の事は言えないけど

「つか、それがどうしたわけ?」
「んー、上手く言えないんスけどねー」
気になったのは、試合の途中から明らかに動きが変わったこと
「まあ、何か揉めたっぽかったけど」
「泣くほどなんだなって思ったんスよ」
「・・・ああ、そういうこと」
泣くほど打ち込んでいるようには見えないかった、と
確かにこいつも来た当時は、
舐め腐った一年が、ってしばき倒したもんな
誠凛と練習試合する前なんか特に
「・・・・・」
「似てんだな」
「先輩は凄いっスね」
「煽てたって蹴りは減らしてやんねーよ」
「そこは減らしてほしいっス」
そんで
「嬉しいわけね」
「そうっス」
「ったく1年坊主が」
「先輩?」
「もっと吐くほどつらいことなんざ、いくらでもあんだよ」
「いっで、すぐどつくのやめてほしいっス」
「んで、その倍面白えこともいっぱいあんだよ」
「ふ、はは」
「けど、ま、次の相手のこと考えろや」
「了解っス」
お前等にはまだ2年ある
「痛いっスよもー」
「うっせ」
もっと足掻きやがれ