君の好きなもの



































試合帰りに寄った小さなコンビニ
飲み物を眺めていたら
すれ違った人から強烈なタバコの臭いがして
「黄瀬君っ」
「はいっス」
「香水つけてます?」
「つけてるっ、ス、よ!?」
腕を掴んで手首を嗅ぐ
「はあ」
「どうしたんスか?」
「すみません、タバコの臭い苦手なんですよ」
「すげえびっくりしたっスよ」
あ、少し紛らいだ
「すみません」
「・・・黒子っちは香水つけないんすか?」
「一度つけたことがあるんですが・・」
「うん」
「吐き気をもよおしました」
「マジっスか」
自分でつけていると、それに酔ってしまうから
人から香るのとは随分違う
「苦手な匂いとかあるっスからね。加減超えると自分でつらくなるし」
「あまり人工的なものは苦手です」
「制汗スプレーとかは平気っスよね?」
「そうですね、確かに」
「じゃあ、多分合うものあるっスよ」
「そうですか・・」
「今度見に行こっか?」
「・・・興味ないですけど」
「んー、俺が黒子っちの好きなものに興味あるんスよ」
「・・そう、ですか」
「ん」


そうやっていつも君は
「・・・黄瀬君」
「はいっス」
「たまにこのモデルがっと罵りたくなる時があります」
「今っスよね、ってか罵られてるんスか?それ」
「・・・・・」
どうしたものかと
ゆっくり息をしながら
自分を落ち着かせていると
居た堪れなさを察して流れを変えるてくれる
「あ、てかそうなるとミスディレクション回避できるんじゃないっスか?」
「あの、僕人間なんで、体臭とか汗だって普通にかくんですけど」
「それもそっスね」
「黄瀬君はたまに匂い変わりますよね」
「何個か気に入ってるのあって、気分でつけるんスよ」
「なんか女の人みたいですね」
「そっすかね?でも、自分で鏡持ってるやつとかいるじゃないスか」
「あれは正直引きます」
「う、気をつけます」
「いえ、というか凄いなって思います。少し尊敬の念もあったりします」
「そうなんスか」
「ただ半分位どうでもいいです」
「それ結構どうでもいいじゃないスかー」
項垂れながら返す
なんだか
本当にリアクションが大きい
「まあ、そうですね、気が向いたらで」
「っス」
「少なくとも君の匂いは嫌いじゃないです」
「・・・・」
突然ぎゅうっと手を握られた
「何ですか?」
「何でもないっスよ〜♪」
君は簡単に
僕でもわかるように
嬉しそうにするから
だから
振り解くのは
あきらめてあげます
「良かったですね」
「ん」