痴話喧嘩を食べに


























「あ、」
「どうした?」
「今日黄瀬君来るみたいです」
「何あいつ友達いねえの?」
「火神君、」
「おい、お前その目止めろ」
「君だって」
「うるせえなわかってるよ、お前もだけどなっ」
「どうやら今日は練習が早く終わったそうです」
「へー、お前ホント好かれてんな」
「・・・・」
「どうした?」
「いえ、そうでもないです」
「何で?」
なんか、機嫌が悪くなった?
「僕を気に入ってるわけではないと思います」
「何でだよ」
「青峰君の隣に居たからですよ」
「・・」
「隣に居たから視界に入ってただけです」
それだけじゃねえだろ
そもそも気づかねえんだから
「お前のこと買ってたじゃん」
「・・」
「あいつ名前に〜っちつけるやつは尊敬してるんだろ?」
「・・・」
あ、眉間に皺よった
「何お前達喧嘩でもしてんの?」
「違います」
「何かわかんねーけど、俺には普通に仲良く見えるけどな」
「・・全然、違います」
ここまで否定的なのも珍しい
つかやっぱ頑固だな、ひかねえし
「何か気になることあるのか?」
「いえ」
「・・あ、つか、そろそろ練習始まるんじゃね?」
「そうですね」

練習が終わるまであと30分位
「お、ホントにきてら」
手振ってんなよ
あーあー、またファンに捕まって
「あ、おい黒子、黄瀬来てんぞ」
「ええ、知ってます」
とか言いながら、一瞥もしない
やっぱ何か変だろ


「おい、お前達喧嘩でもしたのか?」
「へ?黒子っち怒ってるんスか?」
「いや、何かおかしい」
「ふーん」
含みのある顔で、視線を反らされた
ああ、そういうことか
「お前」
「ん?」
「あんま苛めてやんなよ」
「わかってるっスよ〜」




「くーろこっち」
「あ、はい」
「機嫌悪いんスか?」
「いいえ」
その軽薄さが嫌い
僕を通り越して
どこを見てるかわからないから
違うとわかっていても
嫌い
不安になるから
怖いから
「火神っちが言ってったよ」
「君はどう思ってるんですか?」
「言ってくんなきゃわかんないっスよ」
君なんか一度痛い目見ればいい
「今日は火神君達と帰ります」
「ちょっと待ってごめん、意地悪しすぎた」
手をつかまれる、払えないのは多分体格差だけじゃない
「離して下さい」
「黒子っち、おれ」


「ったく、お前らは何やってんだよ」
「火神君」
「火神っち」
「ばっかじゃねえの、つか黄瀬お前さっき言ったろ」
「う、すんません」
「黒子もちっとは吐き出せよ溜め込み過ぎ」
「・・・」
火神君は基本的に間違ったことを言わないから、
だから、余計に腹が立ってしまう
正直だから
「一日中携帯見てた癖に」
「見てません」
繕いたいのに
「見てたろ」
「・・・」
「まじすか黒子っち、超嬉しい」
「お前は喜ぶ前にやることあんだろ」
「う、だって」
「調子に乗りすぎなんだよ。相手お前だぞ、それで自信持てって言うほうが無茶だろ」
「なんスかそれ、俺別にもてたって、他と付き合う気ないし、
つかそれなら黒子っちだってそうじゃん。青峰っちも火神も、桃っちとかもろそうじゃないっスか。
けど俺は、一緒に居る時の黒子っちが好きだし」
「言ってんぞ?黒子」
「ふらないで下さい」
下を向いたまま顔を上げられない
「黒子っち?」
「ぶっは、照れてら」
「照れてません」
「じゃ、顔上げてみろや」
「無茶言わないでください」

「ま、いいや、俺は帰るから、お前らほんといい加減にしろよ」
「・・・はい」
「火神っち今度なんか奢るっス」
「当然」

「火神っちは何しにきたんスかね」
「喧嘩の仲裁じゃないですか?」
「痴話喧嘩の?」
「ばかなんですか」
「うん、ごめんね」
その顔に、声に弱い
「はあ、何でそういう顔できるんですか」
両手で頬を覆う
「ん?」
好きだよって言われてるみたいな
「僕も何か技が欲しいですね」
「好きだって言ってくれればなんでもするのに」
照れたみたいに笑う、キレイに
「好きです、縮んでください」
「無茶苦茶だ」
「知ってます」
「あ、じゃあ、これでどうスか」
しゃがむ
「ね?」
「全然縮んでないですよ」
「やっぱり?」
「けど、いいです、何かもう疲れました」
「え、」
「人と付き合うのは難しいです」
「そうっスね」

「帰りましょうか、おなか空きました」
「うん、黒子っち」
「はい」
「好」
「黄瀬君」
「うわ、はい」
「希少価値なくなるので頻繁に使わないで下さい」
「今がそうだとおもったんスけど」
「・・・」

「ってゆーかさ、黒子っち言わなさ過ぎるんスよ」
「そんなことないです」
「あるっス、だからちょっと困らせたくなんの」
「何でですか」
「俺のこと考えたりとか怒ったりとかするでしょ」
そんなん好きだって言われてるようなもんなんスよ」
「そういものですか」
「うん」
「わかりました、じゃあ僕も黄瀬君を不安にさせる方向で行動します」
「やめて、どんだけやきもちやいてると思ってんスか」
そんな態度微塵も出さないくせに
「だって、不公平じゃないですか」
「んー、好きだよ」
「な、んで今言うんですか」
「照れてる」
「じゃあ、不安になったら。何か手とかぎゅっとしてくれたらまた言うよ」
「いりません」
「ええー」
「だから、君と話してると解決しないんですよ」
「いいじゃないスか、そのうち解決できるかもしれないっスよ」
なんでそんな緩く構えてられるんですか
僕だけ焦ってるみたいだ
「これだから君とやっていける気がしないんですよ」
「うん」
「意味わかってないでしょ」
「うん」
「もういいです」
「頑張ろうね」
「・・・検討します」