understand


























「黒子っちー」
「・・・」
呼ぶ声とか、表情とか
「何してるんスか?」
「読書です」
いちいち引っ付いて面倒なとことか
その他諸々ひっくるめて最終的に
「ふーん」
「・・・」
好意だってことは
「・・・・」
「何か用ですか?」
そんなことはとっくに
「何にも無いっスよ」
「・・知ってます」

ずっと初めから君には
君にだけは決して負けたくないと
滅多に向けない対抗心と意地を張って
「黒子っちー」
「・・・なんですか」
「・・何でも無いっス」
「ぶっとばしますよ」
「すんません」
「・・・・」
それを巡りめぐって結局
諦めと溜息と
「暇っスね」
「静かにしてください」
「えー」
「・・・・」
そっぽ向いた君に、視線を向ける
本当にままならない
よし、と一言言えば
それで全て上手く行くのだろうけど
何の問題も無いのだろうけど
自分でも面倒に思うこのプライドのようなものと戦いながら
今日もきっと
何も出来ず
何も言えず
なのに
「黒子っちー」
「・・・」
視線が向けば逸らしてしまう
「黒子っちー?」
「・・・」
なんだかもう呆れて諦めたくなる
「・・好きっすよ」
「・・・・」
それが
勝手に先を行かれたみたいで悔しくて
じゃあ今度は1ヶ月位音信不通にしてやろうか
なんて、そういう下らないようなことを
「・・めんどうですね」
「ええ!?」
勝手に一人で堂々巡りする
きっとこの先も
大人気ないことばかり
きっと
ずっと
繰り返す

「黄瀬君」
「はいっス」
1つ息を吸う
「嫌いじゃ、ないですよ」
「・・うん、知ってる」
こんなことで嬉しそうにするから
そうやってすぐ甘やかすから
「やっぱり嫌いです」
「えー?」
また捻くれる
「・・・・」
「黒子っちー?」
顔を覗き込まれて
やっと視線が合うと
緩んだ顔が目に入るからつい
「・・・・なんですかね」
「ん?」
負けそうになる
「その顔は卑怯なんですよ」
「なんスかそれ」
笑い事ではなくて
「黒子っち?」
「・・・・」
頬を引っ張る
「地味に痛いっス」
「はあ、好きなんですよね」
「溜息つかないでよ」
「喜ばないでくださいよ」
こんなことで
「んー?」
こうやって抱きしめられる腕の中ですら
表情も崩せない頑固さも
わかってるのだろうか、君は
「黄瀬君」
「うん」
きっと今日も言えないことを
「黄瀬君」
「んー」
君の好きまで程遠い