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「なんかあいつ静かじゃね?」
「そう思いますか」
こういう時だけ聡い
「いつもうるせーからな」
「・・・」
「どした」
「昨日好きだと言われました」
「へー、いつものことじゃん」
「はい」
「で?」
「そうですか、と」
「んで?」
「それだけです」
「・・あ?あいつマジだったのか」
「そうみたいです」
間髪いれず
「つかテツも好きなんだろ」
「そう見えますか」
「なんとなく」
「そう、ですね」
「なんで」
「・・嫌いじゃないんですけど、これ以上近づきたくないんですよ」
「なんだそれ?」
立ち位置を守りたい
今のままでいたい
「僕に傾く彼を。傾く自分を見たくない」
勝手な話
「だったらそれくらい伝えてやれよ。じゃなきゃあいつ」
可哀想
つらい
惨め
それとも
「寂しいだろ」
「・・・はい」
そこに行き着く思考が欲しい
「僕も彼も君みたいな人を好きになるべきだったのに」
「俺はそっち側じゃねえぞ」
いえ
「そういう意味ではなくて」

好きだから
触れたくない
と言ったら理解できるだろうか

「黄瀬ぇ、テツが呼んでんぞ」
「うえ、はいっす」
「青峰君」
「ちゃっちゃと仲直りしとけ」
「・・・はい」

「黄瀬君」
「えと、どしたんスか?」
「黄瀬君」
「はい」
「仲直りしましょう」
「・・はいっス」
君が笑うから
嬉しそうにするから
「好きです」

散々迷っておきながら
悩んでおきながら
「・・黒子っち?」
「ちゃんと、好きですよ」
バカみたいに口が滑って
傷つけられたみたいに心臓がきしむ
「ん」
やたら幸せそうに笑うから
やっぱり傾いてしまう