俄虹




































グラウンドの水飲み場で
少し強めに捻って水を出して
頭から被ると
沸騰した血が
体温が
一気に冷やされていって
「はー」
この季節、それが堪らなく気持ちいい

「うはー」
「・・・」
「あれ?黒子っち休憩っスか?」
「・・・」
いつの間にか隣にきたのか
無言で水を流したまま、
ただ右手の指先だけをひたすら濡らす
「突き指っスか?」
「・・いえ」
「どうかしたんスか?」
「ただ、ちょっと」
「・・・」
「キラキラして綺麗だなって」
「ん?」
空気を混じった水は勢い良く流れて、
日差し反射して
キラキラと屈折する
「これ位が丁度良いんですよ」
「ほんとっスねー」


「なーにやってんだよっ」
「う、わ」
「ちょ、青峰っち」
いきなり乗っかられた黒子っちは少しバランスを崩し
しかも、青峰っちが蛇口を思いっきり握ったせいで、
俺と黒子っちはもの凄い勢いで水を浴びた
「何だよ、突き指か?」
「青峰君、びっくりするんで止めて下さい」
「もー青峰っち!!超濡れたじゃないっスかー」
「頭から水被ってる奴が何言ってんだよ」
「全然違うっスよ」
「僕までびしょ濡れです」
「どうせすぐ乾くだろ」
「そういう問題じゃないんスよー」
「・・・」
「おめーは一々うるせえ」
「理不尽っ」

「・・・・・えい」
「え、黒子っち?」
「げ、テツ」
蛇口を上向きにし、今度は黒子っちが思い切り握った
「ぎゃー」
「だー、くそっ」
「ざまあみろ、です」
しかも全開まで捻る
「ちょっと待って黒子っち、俺被害者」
「あ、すみません、つい」
「ついって何?」
「つか、手離せって、テツ」
「いやです」
「てめっ」
「黒子っち、ストーップ」
「噴水みたいに水が上がる」
結構高い所まで上がって、
反射して色がつく
なんか虹っぽい
なんて、ぼんやり思っていた



「あーあ、もう、びっしょびしょっスよ」
「すぐ乾きますよ」
「ったく、おりゃ」
青峰っちのチョップが入る
「痛いです」
「はは」
そう言いながらも黒子っちはなんだか嬉しそうだった
「先戻ってるぞ」
「うぃー」
「ええ」


「さっき天辺の方、虹みたくなってたっスね」
「・・そうですね」
黒子っちは少し驚いた顔をして、ゆっくりうなずいた
多分虹が見たかったんだろうなって、
なんとなくだけど、
君の見たいものが見れたことが
気づけたことが
なんだか妙に、
「暑いですね」
「ん」
嬉しかった