君とキスがしたい



































「事件です」
「へ?」
「驚愕の大事件です」
「ええ!!?どうしたんっスか?」
読書タイムに入ろうとしていた黒子っちからの緊急信号
「これ、見てください」
「ん?」
「さっき買ったポッキー、全部折れてます」
「ちょ、まじスか!?」
「・・・」
「うっそ、全部折れてるっす」
「僕はこの憤りのぶつけ先がわかりません」
「あっはは、災難っスね」
「全くです」
随分ご立腹な様子で
今にも頬膨らましそうだった

「黒子っちドンマイっスよ」
「ええ」
仕方なく、折れたポッキーを食べる
「ほぼチョコがついてません。」
「うは、まじっスか」
「そして、手を汚さないための考慮が無かったことにされています」
「あー確かに、酷いっスね」
持ち手部分から折れているせいで
チョコがかかった所を直に持たなければいけない
いくら暑くなくても
流石に
「溶けるっスよね」
むすっとしながら食べているのが、かわいらしくて
「・・・」
掴んで、食べて、指を拭って
段々拭うのが面倒になったのだろう
左手はお菓子を
右手は器用に本を押さえつつ、ページをめくる

「黒子っち」
「はい、、、えっ」
「・・・・」
チョコがついたままの指を舐める
「・・・何するんですか」
「あ、」
「あ、って、黄瀬君」
「すいません」
だって、汚れてると面倒だろうなって
黒子っちは変わらず、お菓子に手を伸ばす
指、拭かずにそのまま食べるんだ
「なんというか、若干面倒になってきました。」
「んー、じゃあ、はい」
「何ですか?」
「俺が持ってあげるっス」
「?」
「そしたら黒子っちの手は汚れないっスよ」
「はあ、でも、黄瀬君の手は汚れますよ」
「俺は、読書してないんで問題ないっス」
「そ、ですか」
「はいっス」
「どうも」
視線を本に戻し口を開ける
あ、なんか、かわいい、かも

「あの」
「どうしたんスか?」
「楽しいですか?」
「楽しいっスよ」
「そうですか」
「・・・」
「はい」
「どうも」
段々食べ終わるタイミングがわかってきて、
調子に乗って、口元に指を持っていく
「・・・ん、油断しました」
「にひ」
「チョコだいぶついてますね」
「そっスねー、わわっ」
小さい舌先が指を舐める
「・・・」
「はは、くすぐったいっスね」
黒子っちが舐めた指
あー、だめだ
まだ濡れた指を口に含む
薄く甘みが残ってる
キスしてるような気にならないかな

「黄瀬君」
「う、え?」
「ちょっと、何やってるんですか」
「あ、はは」
黒子っちは、はあ、と溜息をついた
「しましょうか?」
「ん?」
甘い香りが近づいて
唇が触れる
舌が重なると味が広がって
隙間から息をすると
ゾクゾクする
「何でわかったんっスか?」
「なんとなく、です」
そんなダダ漏れだったんスかね
「んと、もーちょっとしたいんスけど」
「どこまでですか?」
その問いかけに
押し倒しかけの手が緩む
「えっと、」
「・・・冗談ですよ」
そう言って首に手を回される
何ていうか
「勝てそうに無いっス」
「そうですか」
クスクスと笑うのが随分キレイで
誘われるように触れに行く