平行線
























物言いたげな顔を彼はする
たまに
ふとした時たまに
でもそれは
決して報われない
答えられないこと

「あ、れ?」
「・・・」
「あ、きーちゃん?ごめん」
「お、起きたっスかー」
「下りる下りる、ごめんね?」
「大丈夫っスよ」
「重かったでしょ」
いつのまにか負ぶってもらっていたらしく
「全然っスよ、むしろ筋トレにもならない軽さっス」
「うそー」
「俺鍛えるんスよ、毎日走ったりしてるんスから」
「・・・うん、わかるよ」
「・・そっスか」
「うん」
見ればわかるよ
「だからってわけじゃないっスけど、大丈夫っスよ」


「きーちゃんの悪いとこ教えてあげる」
「うお、いきなり何スか?ダメだし?」
「そ」
「わーなんだろ」
「何で嬉しそうなのよ」
「はは」
「それはね、女の子をすぐ甘やかすとこっ」
「甘やかしてる?」
「甘やかしてるっ」
「んー、褒められたんスかね」
「違うー」
「他の子はわかんないっスけど、桃っちはいつも頑張ってるじゃないっスか」
「そんなことないでしょ」
「あるよ、だから甘やかしたくなるんスよ」
「そんなの皆一緒じゃない」
「んー、俺好き嫌いはっきりしてると思うし、人柄?別に良くはないと思うんスよね」
「自分で言うんだね」
「ま、見た目がコレなんで他帳消しになってるかもだけど」
「それも自分で言うんだね」
「桃っちは特別」
そういうとこが
「ダメなのよ、きーちゃんは」
「酷いっス」

彼はたまに物言いたげな顔をする
覗き込むように
試すように
女の子みたいに
例えば
今みたい
「桃っち、あのね」
「きーちゃんっ」
「いや、聞いて」
「ダメ」
わかるよねって目をする

日を追うごとに
時間が過ぎるごとに
結末に近づいていく
両手で彼の口を押さえて俯く
「ダメだよきーちゃん」
「・・・」
「それは、だめ」
「・・・・そっスか」
「・・・・」
「・・・・そーっスね」
手を握り、口元から離される
「きーちゃん」
「はあ、桃っちには敵わねっスわ」
「・・・こっちのセリフだよ」
まだ誰も
どこにも行けてないのに
どれもまだ解決してないのに
こうやってまた
揺らいでしまうのに

「ねえ、桃っち」
「ダメだよ」
「うん、顔上げて」
「・・・・手、離して」
まだ、自分の本心さえわからないのに

だから、
絶対に
ダメなんだよ

顔を上げるとキレイに笑う
「もう、ちゃんとわかってる?」
「わかってるわかってる」
涙さえも溢れそうになるのに

「んじゃ、ま、何か食べいかないっスか?」
「え」
「だめっスか?」
「・・ううん、いいよ」
「動いてないのに超腹へってて」
「ふふ、お勧めは?」
「そっスねー」
だって、わからないんだよ
皆で過ごしてた時も
今も
いつでも
楽しいはいつも
皆とだったから
誰かって
一人を選ぶ方法が
まだ見当たらない

悪くはない
この中途半端さが
ただ、決してよくもない

いつか、なんてたまに思うけど
いつまで経っても交わらない
今はまだ平行線