誰も彼も

























黄瀬君の話
「黒子っちはすごいね」
と、黄瀬君はさみしそうに言った
内容によっては心配することだってある
大丈夫だって言葉で言う癖に、
目がいつも寂しそうにするから
でも今回は違う
「青峰君を救ったのは、きっと火神君ですよ。」
「んなことないっスよ。火神っち一人じゃ相手になんないって」
目が強く言う
反論したって、何を言っても聞かないから、
届かないことがわかっているから
伝わらなくて
結局
「そうですか」
「うん」
放り出してしまう
このかみ合わなさが
君と僕の頑固さが嫌い

僕の話
「黄瀬ー、交代」
「ういーっす」
火神君の変わりに黄瀬君がコートに入る
「・・・・」
「何お前機嫌悪くね?」
「別に」
「別にじゃねえだろ、めちゃくちゃ機嫌悪いじゃん」
「やめてください」
大きな手が頭を鷲掴みする
いつもなら大して気にならないことでも
少し、やっぱり気が立っていると、どうもよくない
手を払いのけてしまった
「・・・」
「すみません」
「どうしたよ」
コートの中では青峰君と黄瀬君がワンオンワンをしていて
昔みたいに見えるけど
そうではなくて
凄いことで、嬉しいことで
感謝するべきことだと思っている
「こうやって青峰君がバスケしてるのは君のおかげだと思うんですよ」
「あー、大袈裟っつーか、面倒くさいこと考えすぎっつか、この手の話何回目だよ」
「それ位のことなんですよ」
「たかがバスケだろ、んな真面目に考えなくてもよ」
「君にはたかがでも、僕達には結構なことなんですよ」
火神君は適当に唸りながら難しいといった顔をする

桃井さんの話
「私はやっぱりテツ君とかがみんだと思うけどなー」
いつの間にか、桃井さんは買出しから戻っていた
「かがみんやめろ」
「えー?いいじゃない。ね、テツ君」
「いいんじゃないですか」
「どうでも良さそうに言うな」
「ふふ。二人が勝ってくれたし、皆が続けてたおかげじゃない?」
「皆ですか、中々意見がまとまりませんね。」
「まとめる必要あんのかよ」
すぐコートから声がする
「さつきー何か飲むもん」
「俺も欲しいっす」
「スポドリは人数分あるよー」

火神君の話
「火神君はどう思いますか?」
「あー、そうだな・・・」
「・・・・考えてます?」
「考えてるっつーの、ま、お前の元カノだろ」
「桃井さんですか?」
この際元カノの指摘はしない
「そ、なんだかんだ言って一番近くでサポートして、頑張ってたんじゃねえの」
「そう、ですね」
そういわれると、それぞれ自分のことばかり
結局青峰君のことを考えていたのは、いつも桃井さんだ
「火神君たまに良いこと言いますよね」
「たまにで悪かったな、つか答え出たろ」
「そうですね」
黄瀬君から僕、火神君桃井さん
で、皆
「だから考え過ぎじゃね?結局戻ってきてんじゃん」
「いえ、どちらかと言えば考えが足りてなかったんですよ」
自分のことばかりで
他人が羨ましくてしょうがない
「お前ら面倒くさいな」
「正直一番面倒なのは黄瀬君ですね」
彼が引きずってるせいだ

結論
「桃井さん」
「テツ君どうしたの?」
「日頃の感謝の意を込めて、プレゼントを」
「え?何?」
「黄瀬君が」
「俺っスか!?」
「今から買ってきます」
「ちょっと待ってどういうことっスか!?」
火神君に視線を送ると
「まあ、行ってらっしゃい」
「意味わかんないんスけど」
青峰君も状況を理解してない様子で、首を傾げている
「どうしたの?テツ君もかがみんも」
「日頃の感謝の意、です。」
「別に深い意味ないし、まあ、そこ座ってろよ」
「うん」

いつも通り、ただ談笑していると
思いのほか早く黄瀬君が帰ってきた
「何が何だかさっぱりわかんねえっすけど、感謝は込めてみたっス」
「わあ、ありがときーちゃん」
「流石です黄瀬君」
小さな花束を渡す
「どうせなら食えるもん買ってこいよ」
「青峰ちょっと黙ってろ」
「ああ?」
黄瀬君はもうひとつ紙袋を出す
「あ、あとケーキも。花屋のお姉さんと話してたら、並びのケーキ屋オススメされて。一応人数分」
「よし、黄瀬でかしたっ」
「お前偉いな」
「黄瀬君、あとで褒めてあげます」
「まじスか」
「何か誕生日会みたいだね」
「そうですね」
食べ物に食いついた青峰君と火神君は黄瀬君に任せる
「でも、ホント急にどうしたの?」
「急ではあったんですが、まだ言えてなかったと思って」
「何を?」
「ありがとうございます」
「テツ君」
「心配かけてすみません。色んなことが桃井さんのおかげです。」
「テ、テツ君」
「あ、黒子っちそれ位にしとかないと」
パタっと桃井さんは倒れてしまった
「あ」
「あーあ、桃っちー?」
「大丈夫でしょうか」
「んー幸せそうにしてるし、とりあえず黒子っちも食べる?」
「いただきます」
黄瀬君の頭を撫でる
「ん?なんすか」
「まあ、君のせいだったんですけどね」
「ん?」
結局事の発端である黄瀬君は最後まで気づきませんでした。