どっちが早いか














どうせ消えてしまうなら。
壊れてしまうなら。
初めから存在しなければいい。
最初から触れなければいい。






ふと目がさめて最初に目にはいるのは、
カーテンの隙間から射す、日光。
髪に触れるのは、窓から流れてくる風。
そして、聞こえてくるのは、隣に眠る奴の息遣い。

手を伸ばして、髪に触れる寸前で手を引いた。
どんなに居心地がよくても、
必ず最後が訪れる。
どんなに強く握っていても、
指の間をすり抜けて、零れ落ちる。

声に出して繋ぎとめようとして、
でも、やっぱりやめた。

安らかに眠るそいつは、こんなこと何も知らないだろう。

どうせ壊れるなら壊してしまえばいい、
でも、六幻に伸ばした手だって、コイツが邪魔で届かない。

だから、精一杯けりを入れて、ベッドから落としてやった。
「っ・・・・・・痛ぇ・・」
無理矢理現実に戻されたそいつは、瞼の重さに耐えられず、
間抜けな面をしている。
「はぁ」
溜息がでる。
「・・ん?・・ユウどうしたんさ」
「うるせえ」
「・・・」
カーテンを掴んで、外を眺めた。
いつもと変わらない風景と、いつもより少し明るい光りと、
「大して変わらないのにな」
「ユウ?どうしたんさ」
それでも、変化している。
実際この命の残量も減ってきているのがわかる。
「どうせすぐに壊れる」
いつの間にベッドに戻ってきたのか、
横から抱きしめられた。
「なにすんだ」
「何か今日のユウ怖いんですけど・・」
変化は必ず訪れる。
「ユウ?」
その腕だっていつかは離れる。
「ユウー?」
そんな事初めからわかっていた、
「うるせえよ」
「どうしたんさ?」
ラビの腕を掴んだ、
壊れることも承知で手を伸ばしたのは、
「ユウ、腕痛いんですけど」
俺もお前も同じ。
だったら、
「うるさい」
首を掴み、引き寄せて、思い切り睨みつける
「何?ユウ誘ってんの?」
言葉は返さず、視線はそのまま
「マジ?」
はにかんだ面、触れる唇。
首を離して、髪を引っ張った。


壊れる暇なんてやらない。