流川

ひらひら 色の付いた紙が夜風に舞う それをただボーっと眺めていた。 「あ゛?なんだこれ」 「土方さん、七夕知らないんですかィ? 」 「いや、」   『織姫と彦星が土方の頭上に急即落下して、俺が副長になれやすように」   「誰でィこんな物騒なもん書いて、こりゃきっと山崎ですぜ、土方さん」   「いやいやいや明らかにお前だろ」 「全く自意識過剰でさァ、土方さんは」 「お前、頼むから一発殴らせろ」 「ヤでさァ」 カラン カララン 風鈴の音だ また笹がゆれる 「‥土方さんかき氷食べたくないですかィ?」 「お前、寝るか食うかしかすることないのか」 「そんなことないでさァ、ちゃんと土方さんいびるのも入ってますぜ?」 「わかった、とりあえず刀を抜け」 「こんな日に物騒なことはいけねェ、」 「おまえが言うな!」 「土方さんは何書いたんですかィ?」 「俺は別に、」 『マヨネーズ専門料理店ができますように 土方』 「土方さん、そりゃすぐ潰れちまいやすよ」 「‥うるせぇ」 「ん?」 『お妙さんと恋仲に慣れますように、ってか殴られませんように!!』 「「…」」 『真撰組がこのままずっと変わらずにありますように』 「ほお、誰が書いたんだ?」 裏を見ると、 『やっぱり、嘘です。ミントン大会で優勝できますように!   山崎 退 』 「死ね」 言うと同時に短冊を破った 「そりゃあんまりでさァ」 「ったく、どいつもこいつも浮かれやがって」 「マヨネーズよりはましでさァ」 「何だとコラ!」 「まあ、いいじゃねェですか、無礼講でさァ」 「お前は、いっつも無礼だろうが」 「平和なんですよ」 意外と言葉が出た、確かにそうだな 「‥まあな、」 「まあ、いいか。…?」 短冊にまぎれて何か別のものがぶら下がっていた 「オイオイこれまさか、」 「あ」 藁人形に 『ってか、今すぐ死にますように』 と書かれていた 「丁寧に写真つきかコラ!」 「土方さん、巷で藁人形はブームなんですぜ? 女子高生の携帯ストラップ見てみなせェ。 皆ついてやすから」 「んなことあるかボケ!」 「いけねェ、俺仕事があったんでさァ」 「嘘付け、お前仕事したことねえだろうが!!」 「んじゃ、俺はこれで」 「待てコラ、総悟!!」 屯所は今日も平和です。