授業中も

チャイムが鳴る。 平凡な授業が始まる。 つまらない時間が流れていくことは、もう知ってる。 でも、それでも、そんな事が気にならないくらいの過ごし方を、 知ってる。 左斜め前、窓際。 そこはカズ様の席。 手が届くほど近くはないけれど、 丁度人の間をぬってカズ様の後姿が見える。 この席はもう運命だと思った。 授業中ずっと、カズ様が何してるのか観察できる。 カラスとよくわかんない事してたり、窓の外を眺めたり、 それをカラスが後ろから邪魔したり。 この時間は結構楽しい。 授業中そうやって過ごしてると、 不思議とつまらない話も、聞こえてこない。 だから、今日もそうなる筈だったんだけど、 いつも通り、つまらない授業が始まって、 カズ様観察をしていた。 3限目が始まって、10分位経った時だった。 あろうことか、カズ様と目が合ってしまった。 やばっと心の中で思いつつも、今更目をそらすわけにはいかないし。 ってか、今まで目が合わなかったのも不思議だけど。 うわぁ、でもやっぱ恥ずかしい。 頭の中がぐちゃぐちゃになってきた。 すると、カズ様が二カッと笑ったのだ、 そして、口パクで「暇だよな」って。 うんうん、と大きく首を振って返したけど、 不意打ちを受けたもんだから、顔が少し熱くなってきてて。 そしたら、今度はカズ様が何か思い出したような顔をして、 制服のポケットに手を突っ込んだ。 そして、何かを投げる動作をしている、 あっ何か投げるんだ。 そう思い、机の上に放り出していた手を少し浮かせた。 カズ様の手から飛んできたのは、飴だった。 飴に向けていた視線を、カズ様に向け直すと、 「やる」と、また口パク言われた。 今度は「ありがとう」と返せた。 飴はオレンジ色、食べるのが勿体無い。 家に帰ってカズ様コレクションに並べたいっ とか、思ったけど。 でも、食べた。 何か今食べるものだと思ったから。 口の中で転がる、オレンジの飴で遊びながら。 また、カズ様観察を続けた。 今日もつまらない授業。 でも、少しずつ変わっていく1日が楽しいと思えた。