サイレントナイト

〜例えば、私の生まれた日が違っていたら、 会えなかった。 たくさんある星のなかで、たくさんの時間の中で ここに生まれて、 たくさんの場所の中で、ここに生まれた。 そして、出会ったんだと。〜 町を歩いていて、 聞こえたその歌は、冬のようなベルの効果音とともに かすれそうで、なのに強く響く声とともに当たりに降っていた。 「夏なのに」 まるで、真冬のクリスマスソング。 何で、今こんな歌? 「俺も思った、冬っぽいよな」 「カズ様!!」 だめだ、カズ様とデート中なの一瞬忘れてた;; それほど聞き入ってしまったってことなのかな? 「雪が降ってきそうだし」 「そうそう、私も思った。何で今だしたんだろ?」 「不思議だよな、最近よくかかってるし」 夏に夏の歌、冬に冬の歌を出すものだって、 別に決まりは無いけど、何となくそう思っていた。 「seasons horizonが歌ってるらしいよ」 「季節、境界線?」 「あ、そうなんだ」 現役中学生だし、単語を聞くと訳してしまうのが、 学生の定め。 「CD見てみる?」 「うん、気なってきた」 休日は、何となく電話したり、出かけたりが増えた。 勿論学生だから、買い物ばかりしてられないけど 店内では、夏らしい曲が流れていて、 新譜CDが並んでいる場所に、 明らかに違う雰囲気があった。 真っ白な布の上においてある、真っ赤なCD。 「あ、これ」 「視聴できるって、」 カズ様がヘッドフォンを私にかけてくれた なんとなく、目をつぶってみた。 ピアノ音とベルの音が響いて、歌が始まった。 〜もし、違う私がここに居たら、 会いたくても、会えなかったかもしれない 流れ星がいくつも流れて、それで終わったかもしれない ずっとずっと、待っているのは、貴方に会えるから 〜 「どうだった?」 「カズ様も聞いてみて、何か、こう来るから」 「はは、そっか俺も聞いてみる」 私はカズ様を見てた。 〜ほら、聖なる夜に祈ったでしょ 会いたくても、会えなかったかもしれない 流れ星がいくつも流れて、それで終わったかもしれない ずっとずっと、待っているのは、貴方に会えるから 〜 「と、変わった歌だな」 「ね、」 「今から夏が始まるって時に、冬の歌だもんな」 「カズ様、私これ買ってみる。」 「ん、俺も買ってみよ」 CDには緑のリボンが十字にかけてあって、 本当にクリスマスみたい。 クリスマスもカズ様と一緒に入れたらいいな。 ってか、カズ様と同じCD。 毎日聞いて寝よう。 日が落ちていた。 もうすぐ夏だけど、夜は少し涼しくて、 心地くて、手を繋いで帰った。 もうすぐ、家に着く 「あのさ、夏休み海行こうか」 「はいっ!」 もちろん、カズ様とならどこまでも!! 「うん」 そう言った、カズ様のはにかんだ顔は凄く好きだと思った。 「じゃ、また明日」 「はい、カズ様また明日」 そして、手を離すと冷たい夜の風に触れて、すぐに冷えてしまった。 カズ様が見えなくなるまで見送って。 家に入った。 そして、握ってもらった手に自分の手を重ねた。 夏には早い静かな夜だった。