腑抜けた未来について



































コンビニの帰り道
手をつないで歩く
終始反射していた頃は、季節の変化だとか、
気温がどうだとか気にしたことは無かったが、
春前肌寒く感じるのが煩わしい
けど、
人間と同じように感じるせいで、
こいつが寒かったりとか、辛かったりとか
人並み程度には共感できるから
これはこれで、と思う




黄泉川の家に辿り着くまでの道
並木、桜が舞う
「わー」
打ち止めはつないでいた手を離して駆けて行く
それが何でかスローモーションにみたいに感じた
振り返って、何度も飛び跳ねて
「見て見て一方通行、花びらが舞ってるーってミサカはミサカはスキップしてみる」
「こけるンじゃねェぞ」
桜が舞う中をはしゃぐ姿は
眩しいなァ


なあ、そうやっていつかは
走って行くんだろうな
手を離して
離れていくんだろうな



少し強い風が余計桜を散らせて、
風と光とで目が霞んで
立ち止まると
打ち止めが隠れそうになる
ああ、いつかは



その時に自分がどんな顔をしていたのか
俺は知る術はないが
霞んでいた筈のガキは、すぐ目の前まで来ていた
「一方通行っ」
「ってーなぁ」
走ってきたままの勢いで抱きつかれた
「何ですかァ?」
「やだよ」
「あ?」
「一方通行が見えなくなったからとっても不安になったのってミサカはミサカはあなたにしがみついてみる」
「はあ?ばっかじゃねーの」
「だって、」
「さっさと帰るぞ」
「・・・うん。でもさっきのあなたはなんだか遠くを見るような目をしてたかも」
「してたかもなァ」



お前が離れたいと言えば
言わなくても離れていけば
俺は追いかけないし
ましてや邪魔なんかしないから
ちゃんと光の世界で生きていけるようにするから
それまでは、こうやって
手をとるなら、居てくれと言うなら
出来るだけ傍に居よう


そう言い聞かせるのに

「どっか行っちゃやだよ?」
「買出しの袋持ってどこ行くってンだよ」
そう言われる度うまく返事が出来なくなる
「この手を離さないってミサカはミサカは宣言する」
「何だァ?」
「そうすれば一方通行が見えなくなることは無いかもってミサカはミサカは我ながら名案を思いついて満足してみたり」
「そら良かったな」
「だから一方通行も離さないでね」
「風呂も便所も一緒にってかァ?そら恐えなァ、オイ」
「うぅ、あなたがどうしても離したい時は我慢するけど、ミサカから手を離すことは無いってミサカはミサカは断言する」
「そォかよ」

そう言われたら、どうやってもまだ、
離れられないなァ

「でも、何だかんだいっても一方通行は一緒に居てくれそうな気がする」
「いつまでガキのお守りさせられンだよ」
「ひっどーい、ミサカだってすぐ大人になるんだからってミサカはミサカは未来のミサカを想像してみたり」
「何年先の話だァ」
「・・・何年も大人にならなかったら一緒にいてくれるの?」
「・・・一生面倒見させる気かよ、勘弁しろ」
「ちぇー」
「お前は・・」
本当にこの先も俺と一緒にいたいのか?
なんて聞きそうになって

口をつむぐ
「てめェだってそうのうち、どっか行きたくなるンじゃねえのか」
「そうかなぁ、うーんミサカは一方通行と一生一緒に居ると思うってミサカはミサカは未来について語ってみる」
「・・・そォ、かよ」
「うん」
「そォだな」
「ん?」

何の根拠も無いのに
「・・・俺もそんな気がしてきた」
「わー、それはとっても幸せかもってミサカはミサカは繋いだ手を振りながら喜んでみる」
「おい、俺の手まで振り回すな」
打ち止めはきゃあきゃあ言いながら飛び跳ねる


それが満更でもないってのが、
多分、もう、手に負えないんだ