Apr1st





























「あのね、ミサカは培養器に戻らないといけないのってミサカはミサカは残念なお知らせをしてみる」
「・・・なンだァ?」
あまりに突然で、
演算を止められたんじゃないかと思うほどに
頭の処理が鈍い
「今まで大丈夫だったからこのまま外で成長していくんだってミサカはミサカは思ってたんだけど、」
「どっか悪いのかァ?」
「ううん」
「打ち止めはゆっくり首を振る」
「培養器から出るのが早すぎたんだろうって、まだ色んな機能が不十分なんだってミサカはミサカは聞いたままを説明してみる」
「・・・」
「だから、培養器に戻って様子を見なきゃいけないのってミサカはミサカは悲しい報告をしてみる」
「・・・」
「でもね、今の妹達位に成長すれば出られるかもしれないのってミサカはミサカはほんの少し希望を提示してみる」
「そォか」
「だから、それまで、一方通行とお別れしなきゃいけないのってミサカはミサカは涙を堪えつつ笑ってみたり」
「これでしばらくは静かになるなァ」
「ひっどーいってミサカはミサカはちょっと投げやり気味にパンチしてみたり」
「・・・」
撫でるようなパンチは、心臓の辺りに辛かった
4、5年か
「あのね、ミサカはね。ホントはずっとあなたと居たかったんだけどってミサカはミサカは残念そうに述べてみる」
でも、数年後にはあなたに会える筈だから我慢するのってミサカはミサカはちょっと大人なった自分を想像して気を紛らわせてみる」
「だから、ほんのちょっとだけ待ってて欲しいのってミサカはミサカは一生のお願いを使ってみる」
「どうだかなァ」
「約束、ね」
「・・・・覚えてたらな」
「・・ん」
「・・・」
「・・・・」
そこで会話は止まった
会話が止まったから、打ち止めの会話を処理する必要がなくなった
会話だけじゃなくて
これから先、こいつが戻ってくるまで機能しなくなる





居なくなるってなんだ
何がどうなるんだ
こうやって言葉を交わすことが無くなって
勝手に触れてくることも無くなって
あと
あとなんだ
たった数年だろ


そんなことをループしていたら
「信じた?一方通行、今のはね!!・・・・?」
「な、んだ?」
顔を上げて打ち止めを見ると
みるみる表情が壊れていて、
涙が目から溢れ出す
「・・・一方通行!?え、ご、ごめんなさいっ」
「・ぃ・・・あ?」
いきなり打ち止めが飛びついて
何がなんだかわからなくて
何でこんなに震えてるのか
何で急に泣き出したのか

「違うのっ嘘なのっごめんなさい」
「・・・」
演算を取られた時とは違う鈍さ
何でこいつが泣いてるのかとか
何でこんなに震えてるのかとか
もう、本当にわけがわからなくなった
「オイ、わけわかんねェだろォがクソガキっ
打ち止めの前髪を掻き上げながら上を向かせる
大きなナミダは止まる気配がなくて、
脱水症状にでもなるんじゃないかって位
勢い良く流れ落ちる
「あの、ね、嘘なの、ってミサカはミサカは、説明してみる」
「あ?培養器に戻るって話か?」
「ごめ、なさい」
しゃくりを上げて怯えているようにすら見える
「オイ、何で・・・」

なんて、聞くまでも無かった
バカ正直なクソガキが嘘つく理由なんて、一つしかなかった
そういうことか
カレンダーは4月1日に○囲みがされていた
大きく溜息をつく
「わかったから泣き止め」
打ち止めはガタガタ震えながらしがみ付いたまま、顔を上げない
嗚咽が混じりながら、何度もごめんなさいを繰り返す
「一方通行を、ビックリさ、せて、それで、お終い、に、するはずだったの、ってミサカは、ミサカは、、、当初の予定、を、説明してみるっ」
「だったら何で急に泣き出したんだよ」
打ち止めは急に顔を上げる
「あ、あなたが」
「あン?」
まだ、止まらない涙を指で拭うけど、
ボタボタと零れていって、もう間に合わないから止めた
「あなたに、そん、な、顔、させるなんて、思わなかったのぉ」
「・・・・」
その時どんな顔してたのかなんて
特に意識だって何も
けど、
多分余程酷い顔していたんだろう
「うぅ」
「・・・・」
情けなさ過ぎだろクソボケ
「あーあ、」
「ん、ぇ?」
「いい加減泣き止めよ」
「・・ぅ、」


肩を掴んで引き剥がす
「面倒くせェな、てめェなんか培養器にでもなンでも入ってろよ」
「・・・ん、ごめ、ん、な、さい」
チョップした
打ち止めが不安気にゆっくり顔を上げる
合った視線をそのまま逸らさない
また何度も涙を拭ってみるけど、やっぱり零れるほうが早い
「・・嘘?」
「・・・」
「今の嘘?ってミサカはミサカは確認して見る」
「これでアイコだろォが、もういいだろ」
「・・・ぅ、うんってミサカはミサカは、あなたから絶対離れないっ」
必死にしがみ付いてグズグズ言ってるガキの小さな肩に頭を預ける
「・・ごめんなさい」
「も、いいっつーの・・」
そう言うと、
打ち止めの手が首に回ってきた
体温と匂いと抱き心地と
心臓の音と
「・・一方通行ぁ」
「ん・・」
涙混じりの声含めて
今更もう、手離せるわけない