絆創膏




































適度な生活音の中
日課のまどろみから一転して、打ち止めの声が響き渡る
「いたぁっ・・」
「あらら」
「うわ〜血が出てるってミサカはミサカはー」
「誰もが通る道じゃんよ」
「うぅ・・」
「一方通行、サイドボードに絆創膏あるから頼むじゃんよ」
「何だァ?」
打ち止めが歩いてくる
「黄泉川のお手伝いしてたら、指切っちゃったのってミサカはミサカは人差し指を見せてみる」
「・・あー」
切り傷
ほんの少しだが血が滲んでいる
「結構痛いかもってミサカはミサカはしょんぼりしてみる」
「ったくよォ」
「絆創膏貼ってほしいかもってミサカはミサカはお願いしてみる」
「・・おら、座れ」
「うん。あ、一方通行ミサカそっちのゲコ太柄の方が良いかもってミサカはミサカは注文を付けてみたり」
「・・っ」
適当に取った絆創膏は好みのキャラクターが描かれていなかったのだろう
舌打ちして、カエルのマスコット柄を取る
絆創膏にはすぐ血が滲んだ
「ありがとう一方通行ってミサカはミサカは指先をちょっと不安気に見つめて言ってみたり」
涙は零れてこそいないものの
ほんの少し瞼を閉じるだけ溢れ出しそうに溜まっている
指先を切っただけでも
痛いよな、普通は
「一方通行どうしたの?どっか痛いのってミサカはミサカは尋ねてみたり」
「・・・」
無言でデコピンする
「もう、何するのってミサカはミサカは憤慨してみるっ」
「・・飯、途中だろ」
「そうだったってミサカはミサカは任務を完全に忘れていたぜ」
「はいはい、もう出来てるじゃんよ。」
「あー、ミサカもお皿並べるってミサカはミサカは急いで駆け寄ってみる」
「つーかこの肉じゃがも炊飯器かよ」
「当然。ほら、子供は食べて風呂入ってさっさと寝るじゃんよ」
「へいへい」
別に痛くはねェが背中を軽く叩かれ、
何もかもが炊飯器で出来た料理を囲む
あれやこれやと、打ち止めは暴れながら飯を食って、
ほんの少し休憩したら、速攻で風呂に向かう




「一方通行早くってミサカはミサカはあなたを急かしてみる」
「忙しいガキだなァ」
「今日はアヒル隊長をお供にするのだってミサカはミサカは先日買ってもらった浮き人形を抱えてお風呂場へゴー!!」
「うるせェぞ、クソガキ」
脱衣所に付いた途端ガキは浴室に直行する
「ミサカ先に入ってるねー」
「オイ、アヒル忘れてんぞ」
「いったぁっ」
「・・・ああ゛?」
遅れて浴室に入ると打ち止めが風呂の中で指を押さえている
「うぅ」
「どうした」
「絆創膏の中に湯が入ってきたのてミサカはミサカはぁ」
「・・・沁みるのか?」
「うん」
「はあ、そこ座れ」
「へ?」
「あと、そっちの怪我してる手ちょっと上げてろ」
「わわ、」
風呂の淵に頭を乗せさせる
天井を仰ぐ状態で
「洗ってくれるの?」
「仕方ねえだろ、びーびーうるせえんだよ、目瞑れ」
「うん、ありがとう一方通行ってミサカはミサカは言われたとおり目を瞑ってみる」
妙なマスコットが描かれたシャンプーで、
ガキの小さい頭を洗う
指を通る髪は随分柔らかい
「ふふ、」
「なんだあ」
「一方通行の手がとっても気持ちいいってミサカはミサカはあなたの意外な一面ににんまりしてみる」
「うるせえなァ」
「ちょっと首が痛いかもってミサカはミサカは不満を言ってみる」
「黙ってねェと顔にシャワーぶっかけるぞォ」
「それはやめてーってミサカはミサカは両手を挙げて降伏宣言ー」
「かけるぞ」
シャワーで泡を流す
「極楽極楽ーってミサカはミサカはちょっと眠くなってきたかも」
「いい気なもんだぜ」
「一方通行ってミサカはミサカは声をかけてみる」
「なんだァ」
「この怪我が治ったら今度はミサカが一方通行の頭を洗ってあげるねってミサカはミサカは約束してみる」
「そォかい」
「うん」
「終わったぞ」
「ん〜」
と伸びをしながらガキは風呂から出てくる
入れ替わりで俺は風呂につかる


「・・・何してんだ」
タオルを片手に持ったままガキはキョロキョロしている
「一方通行大変ってミサカはミサカは状況分析してみる」
「なんだよ」
「体をこするとまたお湯が入ってきて指にしみるかもってミサカはミサカは分析結果を報告してみる」
「あン?」
「しかも、泡が入るともっと痛いかもってミサカはミサカは更に補足しみる」
「・・・・貸せっ」
ざばあっと態と勢いよく風呂から出る
「えへへ、ミサカ今日は殿様気分かもってミサカはミサカは幸せ指数の上昇を伝えてみたり」
「それを言うなら女王様じゃねェのか」
「ほ〜あなたの口から女王様って言葉が出るなんてってミサカはミサカは驚いてみたり」
「っ、てめェが毎日毎日絵本読むからだろォ」
「じゃあ、今日はミサカ女王様ねってミサカはミサカは偉そうに腕を組んでみる」
「今日だけだァ」
「わーいってミサカはミサカははしゃいでみたり」
「ったく、じっとしてろ」
「は〜い」
何かにつけては指が痛いと抜かすから、
出来るだけ視界に入れてやることにした
面倒で仕方無いが
たまには、本当に気が向いたら
少しは返してやろうとか、ほんの少しだけなら形にしてやろうかと
柄にも無いことを思っただけで、
どうしようもないのに、無性にどうにかしたくなる感覚を
今だけ形にしてやろうって
「一方通行はやっぱり優しいってミサカはミサカはあなたの愛情をかみ締めてみたり」
「言ってろクソガキ」




指の絆創膏が取れるまでは、な