その重さ


































ぐしゃっと
何かを踏んだ

買い物の帰り
どうしてもとせがむから仕方なく公園に来た
俺がコーヒーを飲み終わるまでの間
それが時間制限
に、なるはずだった
公園に入り、ベンチに向かう途中
「あー!!」
「・・・・」
名前も知らない植物を踏んだ
慌てふためく打ち止めと、踏んでいる草とをゆっくり対比する
それはどうやら、何か花の一部だったらしい
茎が折れ、花が地面に伏している
この状態をどうしていいかわからなかった
そのまま、踏みつけたまま
動けなかった
こんな時ですら、闇ばかり
日中の日がさす時でさえ
視界がモノクロに堕ちていくような
別に忘れる気なんて無いのに
刷り込むように
「一方通行っ」
「・・・ぁ」
「さっき買ったジュースを頂戴ってミサカはミサカはお願いしてみる」
「・・ああ」
袋に入ったジュースを取り打ち止めに渡す
「それから、一方通行は左足を1歩後ろにね」
「・・・」
「大丈夫。ミサカに名案があるんだから」
「・・・・」
ゆっくり足をずらすと、折れた花が地面に擦れた
「ぷはぁってミサカはミサカは腰に手をあてて飲み干してみる」
「・・・」
「やっぱり夏ははソーダが一番かもってミサカはミサカはシュワシュワの余韻に浸りつつ・・・」
「・・・」
打ち止めは一気にジュースを飲み、何かを探しているような素振り
「あ、お水入れてくるからちょっと待っててねってミサカはミサカは水飲み場までダーッシュ」
「・・・・」
その目まぐるしい動作をただ眺めていた





「お待たせーってミサカはミサカは簡易花瓶を見せびらかしてみる」
「・・・な、んだ」
「はい」
渡されるまま受け取る
小さなペットボトルに水が入っている
ああ、そうか
「それでー、今度は折れたお花をプチッと」
千切ったそれを、
「花瓶にー」
挿す
「ね、大丈夫でしょ?」
その笑みはいつにもまして眩しくて
膝を折って、体の力を抜きたくなるような
全部任せたくなるような
あの表情で
いつのまにか花瓶は打ち止めの手に、
空いた手は俺の手を握っていた
そこから伝わってくる温もりを感じる
「大丈夫だよ」
「・・・」
ずるいと思う
こんな時
いつも言葉にできないのが
言葉で返せないのが
何も言わなくて
言えなくて
ただ、握り返すだけで
許されてしまうのが
本当に
ずるいと



「良かったねってミサカはミサカはタンポポが早く元気になるように高く掲げてみたり」
「・・・てめェの背じゃ大して変わらねェよ」
「ひっどーい、じゃあ、あなたが掲げてってミサカはミサカは差し出してみる」
「だから、、、」
自販機の前で立ち止まる
「どうしたの?のど渇いたの?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」
「3秒で決めろ」
自販機に視線を向けたまま
「・・・え?」
「3・・・2・・い」
「みかんソーダっ!!ってミサカはミサカは何だか良くわからないけど叫んでみる」
「ま、セーフだなァ」
指定のジュースを買い、袋に突っ込む
その重さをしっかりと認識する
それはずるさの重量だ
「・・・」
「行くぞ」
「早く元気になるように、帰ったら黄泉川にお砂糖もらおうねってミサカはミサカは告げてみる」
「そォだな」
「そして、帰ったらみかんソーダを一気飲みするのだーってミサカはミサカは宣言してみたり」
「好きにしろ」
「すぐ元気になるからね」
「・・・ああ」