to me


































執着するわけを知ってる
好意を寄せる意味を知ってる
最終信号が泣いたのを
第一位が笑ったのを
ミサカは見た
そこにミサカは居たのに
まるで景色か何かのように
ここに居るのに
見えているのに
白い雪が日を弾いて
ミサカだけ消えてるみたいに
ミサカは見てきた







そして今
第一位が得た平穏の中に
ミサカは居た




「ミサカも行きたいーってミサカはミサカは駄々をこねてみる」
「すぐ帰るって言ってンだろうがァ」
「ミ、ミサカも行きた〜い!?」
また最終信号の嫉妬がミサカの中に入ってくる
ミサカの意思に反して、こうやってまた
「や〜だ〜」
「っ・・・ぐあ〜、何でミサカがーい、行きたい〜」
「うるせェ、お前ら大人しく待ってろ」
そう吐き捨てて、第一位は買い物に出かけた
「あ〜!!・・・・・・むーってミサカはミサカは膨れてみる」
「くっそ、ミサカ超イライラするー!!」
黄泉川の家に来てから
この平穏のやり取りを繰り返している
ごく自然に衣食住を共にして




「はあ」
やっとミサカの意思を取り戻して溜息をつく
「つーかさ、最終信号が電極切っちゃえばいいのに〜、
そしたら、な〜んでも悪戯できちゃうよ。最終信号のいいようにさ。
で、ミサカも何かイタズラしてやるし」
「それは、あまり使いたくないのってミサカはミサカは微妙な心境を吐露してみる」
「何で?首輪ついてるようなもんじゃん」
「ミサカはあの人の選択肢を奪いたくないのってミサカはミサカは説明してみる」
「ふーん、でも唾位つけとかないとさ、ミサカとか妹達とかがとっちゃったりして」
「それはだめ〜ってミサカはミサカは両手を交差して大きく×を作ってみる」
「でも、その選択肢を残してるのは最終信号じゃ〜ん」
「む、確かにそれは一理あるかもってミサカはミサカは嫌々納得してみる」
「ま、ミサカは有りえないけど、他のどこの馬の骨とも云々な女出てきたりして?」
「・・・」

どうやらこれは、このミサカの性分らしい
最終信号の命令コードを受け付けないせいか
悪意ばかりを寄せ集めて取得するせいか
喧嘩程荒っぽくはないけど、
そもそも喧嘩したことないからわかんないけど
言葉に悪意がついてまわる
「でも、」
「ん?」
「そしたら、やだなーってミサカはミサカはうなだれてみる」
「っ」
その顔はミサカ知らない
初めて見た
何かぐしゃぐしゃな顔になってる
やばい
反射的に、本能的にそう判断した
息が止まったみたいに
だめ
これはだめだ
だって、だって
多分
最終信号、泣く
どうしよう
どうしたら
その時玄関の扉が開いた
黄泉川も芳川も帰ってきたらただいまって言うから
声がしないってことは、
急いで最終信号を抱え上げた
あいつだ

帰ったばかりの第一位に投げる
「上げるっ」
「ああ゛!?」
「わ〜ってミサカはミサカはまさかの空中浮遊!?」
「っ、オイ、・・・・何泣かしてんだァ?」
「まだっ」
「?」
「・・泣かしてない、もん」
多分
第一位は頭をかきながら
「面倒くせェ」
と言い、抱えていた最終信号を下ろし
「わわ」
「いた何?」
俯いていたミサカと最終信号をチョップした
「喧嘩両成敗だ」
「・・・ごめん」
「・・・・?ミサカもごめんなさいってミサカはミサカは素直に謝ってみる」
「ったく、大人しく留守番も出来ねえのかよクソガキ共」
第一位は溜息をついて、リビングに向かう
ミサカも最終信号も玄関から動けない
「・・・打ち止めっ」
「な、何?、ってミサカはミサカはちょっとビックリしながらあなたに向かって走ってみる」
走っていく最終信号を眺めた
また、あの雪の中みたいに
ミサカはここに居るのに
誰にも
「・・・・・番外個体っ」
「な、なに、、?」
呼ばれたことに驚きながら
声のしたリビングに向かった
「好きなもん取れ」
カップのアイスが
「「ミサカストロベリーがいいっ」てミサカはミサカは・・・」
「だからちゃんと2個ずつあんだろうが」
「おおー」
「ほんとだー」
「一方通行はどれにするの?ってミサカはミサカは尋ねてみる」
「・・・・、バニラ」
第一位は残りのアイスをしまいに行く





ミサカの隣に最終信号
その向かいに第一位が座ってアイスを食べる
「おいしいねってミサカはミサカは二人に告げてみる」
「ん〜」
「・・ン」
自分のアイスを食べながら
ふと
第一位の食べてるバニラを見る
なんか、あっちも美味しそう、かも

「・・・お前らなァ、何つー面してンだ」
「どうしたの?ってミサカはミサカは聞いてみる」
「なに?」
第一位は呆れ顔で立ち上がり冷蔵庫に向かう
戻ってきた手には未開封のバニラカップが
「・・・・?」
「?」
「・・・・」
蓋を開け、ざっと切った半分をミサカと最終信号のカップに入れる
「わーい」
「なにこれ?」
「何じゃねェよ」
「あのね番外個体、アイスは一日一個の決まりなのってミサカはミサカは今日は特別って説明してみる」
「ふ〜ん?」
「・・・」
何で今日が特別なのか
ミサカ達がよっぽど食べたそうな顔をしてたのか
よくわからないけど
その特別でもらったバニラは
やっぱり美味しかった




この平穏がどれだけのものを犠牲にしたのか知ってる
あの時の二人のことも
ネットワークの過去データ
共有される生温いもの
あの後や
まだミサカが知らないことも沢山ある
それでもわかる

だって、あの時
ミサカは見ていた
強いもの
目に見える程濃い糸
なのにどっちも結びが緩々
どっちもきつく結ぼうとしない
そこにたまたまミサカが絡まってるような
なんでか上手く理解できないけど
ミサカはその緩い糸が解けないように
ずっと見張っていよう
解けそうになっても
ミサカがグルグルに巻いて
動けなくなるくらいに
思いきり結んでやろう
それはミサカのためなのか
それとも他に何か理由があるのか
この平穏が案外心地いいのか



「どうしたの?ってミサカはミサカは物思いに耽っている番外固体に尋ねてみる」
「ん?べっつにー、てか最終信号口の周りべとべと」
「・・・」
「ミサカは今アイスに夢中でそれどころではないのってミサカはミサカはおざなりに返してみる」
「どうやったらそうなんのよ?」
「汚ったねェな」
そう言って、最終信号の口を適当に拭う
「んーっ」
「・・流石親御さんvv」
「追加バニラ没収してやろォか?」
「♪〜」
「お断り〜」
そう言うと、最終信号と目があった
「どうしたの?お姉ちゃん?」
「へへ〜、おいしいねっ」
「・・・ん〜」


ただこの平穏が心地いいのか




ミサカはちゃんと知ってるよ
最終信号や第一位が
ミサカ達を必死で守るなら
このミサカはその糸が解けないように
ずっとずっと見張っていよう
絡まっていよう