目と目と手と手

































窓辺に並んで見上げる。

ミサカネットワークには溢れるほどの知能があって、
言葉と意味が辞書のように集まっているってミサカはミサカは説明する。
だから、今日みたいな夜を秋の夜長って言うことも知っているし、
満月にはお団子を食べる風習があることも理解してる
でも、知っているのと経験するのとでは、全然違う
言葉にはレベルがあって、人や環境によって感じ方が変わってくる

窓の外ぼんやり眺めながら
特に何をするでもなく、何を話すでもなく
あなたは月を眺めている

同じ月を眺めているけど、
あなたは何を考えているのかしら
「何だ?」
「あなたは満月が好きなの?ってミサカはミサカは聞いてみる」
「別に」
「じゃあ、どうしてずっと眺めているのってミサカはミサカは2つ目の質問をする」
「さぁなぁ」



言葉や意味を理解するのと違って、感情や感覚を理解するのはとても難しい
どんなに高速に演算しても、心はきっと計算できないんじゃないかな。
「あなたが何を考えているか知りたいなーってミサカはミサカは打ち明けてみる」
「何も考えてねェよ」
「むー」
「ただ、」
「?」
「月が綺麗だな、ってよ」
「・・・」
「何だよ」
「一方通行は知らないかもしれないけど、月が綺麗ですね。はプロポーズなんだよって、ミサカはミサカは大人ぶってみる」
「なんだァ?」
「やっぱり知らなかったのねって、ミサカはミサカはちょっと残念気味に溜息をつく」
「何の話だ」
「ねえ、一方通行。あなたは愛しい人に思いを告げる時なんて言うのかしら?ってミサカはミサカは興味津々」
「知るかよ・・・」
「でも、あなたもきっとこんな風に言ってくれるような気がするって、ミサカはミサカは勝手に夢を見るー」
「ン?・・・ああ、そういうことか」
「あなたが何て告げるのかとっても気になるなー、ってミサカはミサカはなんだか楽しくなってきちゃう」
勢いのまま隣にいる一方通行に抱きついてみた
「うるせえガキだな」
撫でられる隙間から一方通行の顔をうかがうと、
「わ、わー、あ、えっと、ミサカはミサカは・・・」
「なんだァ?」
「びっくりして上手く言葉にできないよーってミサカはミサカは大パニックっ」

だって、そこには穏やかに笑うあなたが居て
月の光に透ける髪が綺麗で
そして何より
愛おしそうに見つめてくる目が

「きゃー」
「おい、どうした」
「だって、今のは不意打ちってミサカはミサカは・・・」
顔を上げられなくて、俯く
目が告げている
大事だよって、愛しいよって

勿論ミサカネットワークには、色んな言葉があるけど
経験に勝るものは今のところないみたい。

こんな気持ちになるのね。
「何だァ?何照れてんだガキ」
「だってー」
ミサカは自分の顔を両手で隠す
目を合わせるのも、顔を見られるのも恥ずかしい。
それが面白いのか、クスクス笑いながら
ミサカの手をとる
「団子掴んだ手で顔触るな」
「・・・うー」
頬を膨らませて、視線があちこち逃げてしまう
それを見て一方通行がまた笑う
優しく笑う
そんなあなたに見惚れてしまって、
ミサカはどうしたらいいのかなぁ

握っている手を離さないで欲しいくて
そのままずっと笑っていて欲しいくて
優しい目で告げて欲しくて

ミサカはあなたのことばかり考えているのよ?

「一方通行」
「あン?」
「・・月がとっても綺麗ね」
「・・・・・ああ」



ホントは、月なんて見てないのにね