些細な日常

































反復する音の世界
雨と雪と
交互に振り続けて
ほんの少し前なら、体温を下げられる心配なんて
不要だったのに

こうやって人の体温を奪っていくのか
こうやって、まとわりついていくのか
こうやって、声を掻き消していくのか

そう感じることで
少しは人に近づけているのか

後ろでくしゃみをする音
立ち止まる

言葉がみつからない
こういうとき普通の人間ならなんて声をかけるんだ?
「うー、ちょっと寒いかもってミサカはミサカはコンビニで雨宿りを提案する」
「・・・・」
溜息をつく

そのまま、歩き出す
小さな視線が背に張り付く

コンビニに入る
「あったかーいっ」
俺を過ぎてお菓子コーナーへ移動する

反射してたら気づかなかったことに、
少しは近づけているんだろうか

カゴに缶コーヒーを何本か適当に入れる
ガサっと違う音がする
「おい」
「えへへー」
「返して来い」
「やだやだってミサカはミサカは子供らしく駄々をこねる」
ふと視線を落とせば、
髪も服も濡れて
表情も少し硬い
「ったく」
レジまでの道でタオルをカゴにいれる
「あっ」
せわしねえガキはレジ横に並んだ菓子に張り付く
レジ打ちの途中で、
近くにあった透明のビニール傘一本追加する
「・・一方通行」
そう言って、ガキは甘ったるそうな菓子を持ってくる
「どっちにかしろ」
「うー」
金を払う
「おら、行くぞ」
「はーい」
ガキは手に持った菓子を元の場所に置く
「おい、これ持ってろ」
「ん?」
ビニール傘を持たせる
さっき買ったタオルを袋から破いて、ガキの頭に投げかける
「わわっ」
「行くぞ」
「待って待って、てミサカはミサカはまだ準備が出来てないよ」
小さいガキとビニール傘はアンバランスで
頭にタオルをかけたまま
着いて来る





「んっ、ん〜」
「なんだあ?」
「あなたが濡れないようにって、ミサカミサかは背伸びをする」
「いいから、てめえが持ってろ」
「でも、あなたが濡れちゃうってミサカはミサカは少しでも二人が濡れない方法を行使する」
溜息をつく
髪を拭く間もなく、傘を開いて背伸びして、
必死に追いかけてきたせいか
さっきと大して変わらない濡れ方
「おら、しっかり持ってろ」
しゃがんでガキの頭を拭く
「もー、ぐしゃぐしゃしないでよってミサカはミサカは」
「うるせえ」
この低さで見えるもの
こうやってしゃがまないと見えないもの
気づかないもの
「ほら、行くぞ」
「あなたも髪がびしょびしょで寒そうよ」
「どうってことねえ」
「風邪引いちゃうかもってミサカはミサカは心配する」
近くを親子が歩く
母親の手に傘、もう片方の手でガキの手を
ああ、そうか
「そこにいろ、勝手にどっか行きやがったらぶっ殺すからな」
「一方通行どこ行くの?ってミサカはミサカは、、、、行っちゃった」
さっきのコンビニにまた入る
ああ、そうだ、これだ
さっさと会計を済ませて、クソガキの元に戻る
「これ着てろ」
「わーっこれ着るのミサカは初めてかもってミサカはミサカは興奮気味に言ってみる」
「そォかよ」
「ありがとう。これならミサカは傘無くても大丈夫ってミサカはミサカは両手を広げて証明してみる」
「・・・」
傘を受け取る
わーとかきゃーとか喚いて着いて来る
そういや、初めてこいつに会った時も
こんな格好してたな


一頻りレインコートを堪能したガキがズボンの裾を掴む
「ああ?」
「さっきの子みたいに手をつなぎたいなーってミサカはミサカは可愛くおねだりしてみる」
「生憎両手が塞がってんだよ」
傘を右手、さっき買ったコーヒーとかを左手
「そっかぁ、じゃあ、今日は我慢する」
急に後ろの空気が沈む
ほんの些細なことで一喜一憂する
ホントに面倒臭えガキだ
傘の柄に袋の持ち手をかける
わざと聞こえるように溜息をついて
手をブラブラすれば
ガキが飛びつく
「〜♪」
聞いたこともねえ鼻唄と
ポテポテと小さな歩幅に合わせて
ガキに降る雨を傘で反射する
勢いよく握った手を振る
「今日のご飯は何かなぁってミサカはミサカは期待いっぱい」
「じっとしてろ」
握った手がホントに
ホントに温っけえなぁ